~あらすじ~
約25年前。
僕が初めて世界に出たのは、20歳のときだった。
今のようにスマートフォンはなく、
海外で携帯電話を使うという発想すらなかった時代。
連絡手段といえば、
たまに立ち寄るネットカフェから送るEメールと、
日本へ一方的にかける国際テレホンカードだけ。
今思えば、不便で、無防備で、
それでも不思議と、不安はなかった。
初海外・タイ
最初の海外は、友人と二人で行ったタイだった。
格安航空券で飛び、
『地球の歩き方』に載っている安宿に泊まり、
現地のツアー会社で申し込んだ象乗りツアーに参加した。
特別な出来事はない。
でも、「日本の外で、自分の力だけで動く」という感覚が、
そのとき、確かに体に残った。
香港・シンセン
その2か月後、今度は別の友人と香港へ向かった。
ちょうどその頃、
沢木耕太郎の『深夜特急』を読み、
物語の中の世界に強く憧れていた。
女人街の安ホテル。
二段ベッドの部屋。
バードガーデン。
中国との境界にあったシンセン。
何か事件が起きたわけじゃない。
でも、
「何かが起きそうな場所に、自分がいる」
その高揚感だけで、十分だった。
この二つの旅が、
僕の中で何かを決定的に変えた。
カナダ横断・ワーキングホリデー
短大を卒業した僕は、
アルバイトを掛け持ちして資金を作り、
カナダのワーキングホリデービザを取得し渡航する。
ホームステイ。
ルームシェア。
英語学校。
夜行バスでのカナダ横断。オーロラとホッキョクグマ。
アメリカ横断・トレックアメリカ
トレックアメリカ。
21日間。
ロサンゼルスからニューヨークまで乗り合いのバンで移動する。
参加者14人、日本人は僕一人。
ほとんどがテント泊だった。
グランドキャニオンを歩き、
モニュメントバレーを見て、
ニューオリンズの夜を知った。
世界は、想像していたよりずっと広く、
同時に、自分は驚くほど小さかった。
モントリオール・ルームシェア
トレックアメリカが終わり
僕は再びカナダへ戻る。
モントリオールでのルームシェア。
各地で出会った数人とは、
20年経った今でも友人関係が続いている。
旅は、思い出になるだけじゃない。
人として、人生に残ることもある。
ヨーロッパ・貧乏バックパッカー
その後、僕はヨーロッパへ向かう。
夜行列車とユースホステルを使い、
フランス、ドイツ、イタリア、北欧、イギリス、スペイン……。
遺跡や歴史的建築、
ガウディの作品に触れながら、
僕は初めて、
「自分は、何に惹かれる人間なのか」
そんなことを考え始めていた。
この旅が、
帰国後の人生を静かに変えていくことを、
そのときの僕は、まだ知らない。
これは、
スマートフォンもなく、翻訳アプリや地図アプリも使えなかった時代、
二十歳の僕が世界に出た記録。
40代の中年になった今の僕が、
もう一度、その旅を語り直す物語です。


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