【第1話】タイ編/1日目①

初海外、いきなり詰んだ。寝坊から始まった20歳のタイ旅


スマホのない時代、初めての海外へ

スマートフォンも、翻訳アプリもなかった時代。
20歳だった僕は、人生で初めて海外へ向かおうとしていた。

行き先は、タイ。

何年も憧れていた「海外」が、
ようやく現実になる――
はずだったその朝は、
最悪の形で始まることになる。


出発前夜、そして寝坊

前日の夜、
一緒に行く友人と、ささやかな出発前夜祭。

緊張とワクワクを肴に、
飲んで、話して、笑って、
気づけば時刻は深夜2時を回っていた。

帰宅しても、なぜか眠くならない。
布団に入っても、目だけが冴えている。

そして――
目が覚めた瞬間、すべてを悟った。

「……マズい。」

完全に、寝坊だった。

国際線に乗るのは初めて。
本来なら真っ先に調べるべき
搭乗締め切り時間を、なぜか確認していなかった。

「急げば、たぶん間に合うだろう」

根拠のない自信だけを頼りに、
巨大なバックパックを背負い、空港へ向かう。


「詰んだ。」

空港に到着したのは、
離陸予定時刻の30分前。

チェックインカウンターに、人はいない。

不安を押し殺しながら、
通りかかったスタッフに声をかけた瞬間、
相手の表情が、明らかに変わった。

それを見て、
僕の表情も凍りつく。

――まずい。
いきなり、詰んだ。のか。

一瞬の沈黙。

スタッフ同士が、無線で何かをやり取りしている。
その間、僕は大きなバックパックを背負ったまま、
ただ立ち尽くすことしかできなかった。

そして――

「なんとか、間に合います!
急いでください!」

その一言で、世界が一気に動き出した。


奇跡の搭乗

通路を全力疾走する僕たち。
一緒に走る、汗だくのスチュワーデス。

「機内食は、ご用意できない可能性があります!」

正直、
そんなことはどうでもよかった。

申し訳なさと、焦りと、必死さで、
ただひたすら走る。

いやいや顔の税関員。
ため息混じりで対応する韓国人スタッフ。

初海外の僕たちに起きた奇跡――
いや、正確には、
プロの皆さんの全力フォローのおかげで、
僕たちは、なんとか飛行機に乗ることができた。

今思い返しても、
なぜ搭乗させてもらえたのか、正直よく分からない。

ただ一つ確かなのは、

「普通なら、まず無理。
とんでもなくラッキーだった」

それだけだった。


出発前から、すでに限界

こうして、
人生初の海外旅行は、
出発前からギリギリの綱渡りで始まった。

でも、
このときの僕は、まだ知らない。

このあと、
本当の意味での試練が、
次々と待ち構えていることを。


(第2話へ続く)

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