【第4話】タイ編/2日目①/バンコク

バンコク2日目、「日本語の安心感」


朝6時ごろに寝たはずなのに、
目を覚ましたのは9時だった。

ほとんど眠っていない。
それでも、不思議と体は動いた。

朝ごはんを食べ、
シャワーを浴び、
チェックアウトを済ませる。

ほんの数時間、床に下ろしていただけのバックパックが、
なぜか、とても重く感じた。
必要なものしか入っていないはずなのに、
無意味な荷物にすら思えてくる。


「政府観光庁」

バンコクセンターを出てすぐ、
一人の女性に声をかけられた。

最初は、適当に受け流していた。
でも話を聞くと、
「TAT、政府観光庁」だという。

半信半疑のまま、
ついていくと――
そこにいたのは、
日本の友人に驚くほど似た男性スタッフだった。

日本語がとても上手で、
終始、にこにこと笑顔。

まるで、
カタコトの日本語を話す友達と、
タイで再会したような、
不思議な錯覚に陥った。


たった一日で、日本語が恋しくなる

たった一日、
日本語から離れただけなのに、
こんなにも、日本語で話すことが安心する。

その事実に、
自分でも少し驚いた。


何も決めていなかった僕たち

政府観光庁では、
旅行者向けに安全なツアーを紹介しているらしい。

具体的な予定を、決めていなかった僕は、
「何を見たいか」
「何をしたいか」
を、そのまま話した。

そもそも、
初めての海外旅行先を
タイに決めた理由は、
数か月前の、日本での飲み会だった。


すべては、ふざけた会話から

「どうせ初海外なら、少数民族に会いに行くとかさ」
「象とか、乗っちゃう?」

そんな、
完全にふざけた会話。

でも、
インターネットカフェで
「海外旅行」「少数民族」「象」
と検索すると、
出てきたのが、タイだった。


深夜特急で、北へ

少数民族の村を訪ねる、
トレックツアーがあるという。

そのためには、
“深夜特急”で、
チェンマイまで行くらしい。

予約と支払いは、ここでできる。
金額は、7000バーツ。
当時のレートで、約2万円。

高いのか、安いのかも分からない。


信じていいのか、分からない

日本の友人に似た彼を、
なんとなく信じてはいる。

でも、
ここが本当に政府観光庁なのか、
証拠はない。

支払いの段階になって、
急に不安が込み上げてきた。

よく考えると、
無料で相談に乗ってくれて、
予約もしてくれて、
さらに、未開封のペットボトルの水までくれる。

タイでは、
レストランの氷ですら
お腹を壊すことがある。
水は、未開封のものを飲め――
そう聞いていた。

至れり尽くせりすぎて、
逆に、怖くなってきた。


マイペンライ

誰が嘘つきで、
誰を信じていいのか。
何が本当なのか。

まったく分からない。

それでも、
他に頼れる人もいなかった。

……『マイペンライ』

『なんとかなる』か……。

僕は、
予約と支払いを済ませ、
今夜の深夜特急に乗ることを決めた。


そして、カオサン通りへ

出発まで、まだ時間がある。

僕たちは、
バンコクの街を、
歩いてみることにした。


(第5話へ続く)

コメント

タイトルとURLをコピーしました