トゥクトゥク、交渉、そして深夜特急
初めてのトゥクトゥク
初めて乗った、
タイのバイクタクシー――トゥクトゥク。
目的地は、
わりと近いはずだった。
……はずなのに、
連れて行かれた場所は、
まったく見覚えのない場所だった。
ここ、どこだ?
クレイジーな運転と、妙な高揚感
運転は、完全にクレイジータクシー。
スピードは速いし、
テンションは高いし、
まさかのウィリーまで披露してくる。
正直、怖い。
でも、ちょっと楽しい。
ガイドブックには
「ぼったくられるから注意」と書いてあった。
でも料金は、
日本円で150円くらい。
日本人の感覚だと、
「まあ、安いか」と思ってしまう金額だった。
迷子と、よく分からない昼ごはん
降ろされた場所を見回すと、
一応、店はある。
でも、
本当にどこなのか分からない。
店の人に聞いてみても、
地図がないから、
結局よく分からなかった。
とりあえず、
食堂っぽいところに入り、
よく分からない牛肉入りのご飯を食べる。
味は……悪くない。
でも、場所は相変わらず分からない。
カオサン通りへ
気を取り直して、
今度はカオサン通りへ向かう。
またトゥクトゥクに乗ると、
運転手はこう言った。
「遠いから、600円だよ。
タクシーでも、それ以上する。」
600円。
高い気もするが、
相場が分からない。
結局、
言われるがまま支払った。
初めての値段交渉
カオサン通りに到着。
雑貨が並ぶ露店で、
友人に頼まれていた
お土産の灰皿を探す。
値段を聞くと、
最初に提示されたのは――1500円。
これは、さすがに高い。
意を決して、
聞いてみた。
「300円で、OK?」
店員は、あきれ顔で言った。
「NO!」
「じゃあ、いらない。」
そう言うと、
今度はこう来た。
「OK、1000円。」
「じゃあ、いらない。」
すると、
店員はため息をつき、
即答した。
「OK、600円。」
もっと粘れば、
まだ安くなった気もする。
でも、時間もないし、
このやり取りを経験できただけで、
もう十分だと思った。
「OK、600円。ありがとう。」
そう言って、
初めての値段交渉を終えた。
ぼったくり、確定
列車の時間が近づいていた。
もっとカオサン通りにいたかったけれど、
「また来よう」と思いながら、
ファランポーン駅へ向かう。
またトゥクトゥクに乗る。
今度の料金は――300円。
行きの半額だった。
やっぱり、
最初はぼったくられていたらしい。
バンコクという街
ファランポーン駅は、
人でごった返していた。
バンコクにいて思ったのは、
「人が強い街」だということ。
街は、
人の力で支えられている。
犬のほうが疲れ切って、
道で寝ている。
車の運転は、
ルール無視に見えるのに、
不思議とぶつからない。
嘘も多い。
でも、笑顔も多い。
とにかく、活気がある街だった。
深夜特急へ
いよいよ、
深夜特急に乗り込む。
僕が乗ったのは、2等寝台。
正直、
どうやって寝るのか、よく分からない席だった。
個室の1等寝台より、
こちらのほうが
よほど人手がかかっているんじゃないか、
と思うほど、
ベッドメイクが大変そうだった。
列車での出会い
隣の席には、
味のあるイタリア人のおじさん。
僕がデジカメで写真を撮っていると、
興味津々で近づいてきて、
「Canon?」
「Oh! FUJI!」
と話しかけてくる。
値段はいくらだ、と
やたら聞いてきた。
深夜特急のピラフとビール
列車内で売っている食事は、
少し割高だったけれど、
ピラフを買ってみた。
……うまい。
正直、
タイ米のイメージが変わった。
売り子のおばちゃんが、
しつこくビールを勧めてくる。
根負けして、
しぶしぶ一本買った。
でも、
さっきまでいたバンコクから
どんどん離れていく深夜特急の中で飲むビールは、
明日へのワクワクもあって、
格別だった。
次に目覚める街
次に目を覚ましたとき、
そこは、チェンマイのはずだ。
寝不足で、
体はかなり疲れていた。
それでも、
ビールの余韻と、
列車の心地よい揺れに身を任せて、
僕はそのまま眠りに落ちた。
(第6話へ続く)


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