【第7話】タイ編/3日目②/チェンマイ・トレッキング1日目

タイの森で、少数民族に出会った


国立公園の中へ入り、
バンを降りたあと、まずは昼食。

簡単なごはんと、
デザート代わりのバナナ。

いよいよ、
ここからが本番だった。


パチンコと、最初の笑い

昼食中、
近くにいた現地の人から
パチンコをもらって、
一番はしゃいでいたのがジェームズだった。

ロンドンから一人で参加している彼は、
このツアーで、
一番よく僕に話しかけてくれるナイスガイだ。

カウボーイハットを被ったジェームズは、
もらったパチンコを
やたらカッコつけて構え、
勢いよくゴムを引いた。

……でも、
全然、飛ばない。

下手くそすぎて、
数人で大笑い。

その笑いで、
少しだけ、
気まずかった空気が和んだ。


トレッキング開始

昼食後、
サンダルに履き替えて、出発。

川を徒走で何本も渡り、
草をかき分け、
獣道のような道を進む。

気づけば、
もう1時間以上歩いていた。


会話できない、もどかしさ

途中、
川辺で休憩していると、
ボンボンとデカ子が話しかけてきた。

……が、
何を言っているのか、
まったく分からない。

仕方なく、
「I don’t know. Sorry.」
そう言うと、
それ以降、
彼らが話しかけてくることは
ほとんどなかった。

会話ができない、もどかしさ。

どうしようもない現状に、
悔しい気持ちと、
「もう英語で話しかけられなくていいや」
とホッとする気持ち。

その両方が、
僕の中にあった。


きつすぎる山道

この日のトレッキングは、
本当にきつかった。

途中から、
ほぼ登山。

正直、
僕もかなりバテていた。

でも、
それ以上に――
いや、
明らかに限界を超えていたのが、
バテ子だった。

徐々に遅れ、
止まり、
水を飲むためにすら
立ち止まらなければならない。

「あと30分」
「あと15分」
「もう半分だよ」

そう言われても、
何度も足が止まる。


旅の意味が、分からなくなる

道中、
体だけでなく、
心もきつくなっていった。

「俺、海外に来て、
 一体何がしたかったんだろう。」

最初は、
「たった2泊」と思っていた。

でも今は、
「2泊、耐えたら帰れる」
そんな気持ちになっていた。


カレン族の村

日が傾き始めた頃、
ようやく、
少数民族――
カレン族の村に到着した。

道中があまりにもきつかったからか、
村に着いた瞬間、
自然と感動していた。

素朴で、
静かで、
どこか懐かしい景色。


村の暮らし

村には、
かろうじて水道は通っていたが、
電気はない。

米は、
玄米から精米する。

その方法は、
昔の日本とよく似ていた。

うすときねのような仕組みと、
竹のざる。

民族衣装を着たおばあさん。
布のパンツだけ履いた子供たち。

教科書やテレビで見た世界が、
目の前にあった。


村での時間

村を見学し、
村人と写真を撮り、
飼っている豚に触る。

ジェームズは、
必死に子供たちの輪に入ろうとするが、
子供たちはまったくその気がない。

完全に、
空回り。

でも、
それすら、
どこか微笑ましかった。


孤立する夜

夕食の時間。

最初の数時間は、
話を理解しようとしたり、
軽く会話に参加したりして、
それなりに楽しめていた。

でも、
話が盛り上がれば盛り上がるほど、
僕は、
その輪から外れていく。

増えていくのは、
タバコの本数だけ。

学生時代、
英語をちゃんと勉強しなかったことを、
ここまで後悔するとは思わなかった。

「帰国したら、
 絶対、英語を勉強しよう。」

本気で、そう思った。


謎の葉巻

話し相手は、
カレン族が飼っている
犬と猫と豚。

タバコばかり吸っている僕に、
カレン族の男性が近づいてきて、
日本のタバコを一本ほしいと言った。

代わりにくれたのは、
細い葉巻。

……でも、
海外2日目。
山の中の村。
正体不明の葉巻。

さすがに、
吸う勇気はなかった。


ほぼ、野宿

寝る場所は、
竹で作られた小屋。

蚊帳の中に、
敷きゴザと、
薄い寝袋。

ほぼ、野宿だ。

僕は、
誰も理解しない日本語で、
小さく愚痴をこぼしながら――

疲れもあって、
気づけば眠っていた。


少数民族の村で迎えた夜。

この時点で、
僕はまだ知らない。

この旅が、
さらに、
過酷になっていくことを。


(第8話へ続く)

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