最初に、はっきり書いておきます
変動と固定、どちらが得かの答えを、僕は持っていません。
持っている人もいません。将来の金利がどうなるかは、誰にもわからないからです。
前の記事で、審査に通る額と払える額は違うという話を書きました。その中で、当初だけ金利が低いタイプは月々の支払いが低く見える、とも書きました。
でも、そこではどちらを選ぶべきかは書きませんでした。別の話だからです。
今回が、その別の話です。
僕が自分で借りるとき、何を見て決めたか。それだけを書きます。あなたにとっての正解は、僕にはわかりません。
先に、変動金利の名誉のために書いておきます
正直に書きます。
この20年ほどで見れば、変動金利を選んだ人のほうが、総支払額は少なく済んでいます。
これは事実です。金利は下がり続けてきましたし、変動と固定には最初から差がありました。「固定にしておけばよかった」と思った人より、「変動でよかった」と思った人のほうが、おそらく多いはずです。
だから、変動を選ぶことは、まったく合理的な判断です。
僕がこれから書くのは、その合理性を否定する話ではありません。
ただ、ひとつだけ、はっきりそう思っていることがあります。
住宅ローンの変動と固定は、そもそも損得で決める話ではない、ということです。
損だったか得だったかは、払いきったその時になって、初めてわかります。途中の時点では、誰にもわかりません。20年たった今わかっているのは、20年分だけです。残りの15年がどうなるかは、まだ誰も知りません。
まだ答えの出ていないもので比べても、決めようがないんです。
だから僕が考えるのは、損か得かではなく、確実に払い続けられるかどうかでした。
そしてそのためには、金利のタイプを選ぶより先に、リスクを踏まえたライフプランが要ります。金利選びは、その一部でしかありません。
変動金利の仕組みで、知っておきたいところ
変動金利には、返済額が急に跳ね上がらないようにする仕組みが用意されていることがあります。
よく知られているのが、この二つです。
- 返済額の見直しは5年ごと(金利自体は半年ごとに見直されても、返済額はすぐには変わらない)
- 見直しのとき、返済額は前の1.25倍までしか上がらない
とてもよくできた仕組みに見えます。実際、急な家計の破綻は防いでくれます。
ただ、ここに一つ、知っておいたほうがいいことがあります。
返済額が据え置かれている間も、金利そのものは上がっています。つまり、返済額の内訳で、利息の割合が増えていきます。
金利の上がり方によっては、支払っている額が、その月の利息にも届かないことがあります。届かなかった分は消えるのではなく、未払利息として残ります。
そして、返済額の上昇が1.25倍で抑えられているということは、抑えられた分が後ろに送られているということでもあります。最後にまとめて精算する形になる商品もあります。
これは、リスクがなくなったのではなく、時間をかけて先に送られている、ということです。
なお、この5年・1.25倍のルールは、すべての金融機関にあるわけではありません。ネット銀行を中心に、採用していないところもあります。ご自分が借りようとしている商品にあるのかどうかは、契約前に必ず確認してください。
当初固定を選ぶときに見ておきたいところ
当初3年、5年、10年だけ金利が低くなるタイプもあります。
このとき見ておきたいのは、その期間が終わったあとに何が起きるかです。
- 期間終了後の金利は、そのときの金利水準で決まります
- 金利の優遇幅(店頭金利からの割引)が、期間中と終了後で違う商品があります
- 終了時に、あらためて金利タイプを選び直すことになります
つまり、3年後や5年後に、もう一度同じ判断をすることになるわけです。
そのとき、あなたは3年分、5年分だけ年を取っています。家族の状況も変わっています。その時点で選べる選択肢が、いまと同じとは限りません。
「とりあえず当初固定にして、あとで考える」という選び方をするなら、あとで考える日が、契約書のどこに書かれているかだけは、確認しておく価値があると思います。
それで、僕はどうしたか
ここから、完全に僕個人の話です。
僕は、全期間固定を選びます。フラット35のような、最後まで返済額が変わらないタイプです。
理由は、得だと思っているからではありません。たぶん、損をします。固定は最初から金利が高いので、金利が上がらなければ、僕は多く払うことになります。
それでも選ぶ理由は、ひとつです。
払えなくなる可能性を、できるだけゼロに近づけておきたいから。
僕が怖いのは、総支払額が数百万円多いことではありません。ある年に、払えなくなることです。
家を失うかもしれない。家族に不安な思いをさせるかもしれない。そのとき、「あのとき変動を選んだから」と考えてしまうかもしれない。
その可能性を消すために払うお金を、僕は保険料だと思っています。
火災保険は、火事が起きなければ掛け捨てです。それでも、みんな入ります。起きたときに耐えられないからです。
僕にとって、固定金利の上乗せ分は、それと同じものでした。
これは、僕の性格の話でもあります
正直に書くと、これは合理性の話というより、僕がどういう人間かという話です。
僕は、寝る前に「大丈夫だろうか」と考えたくないタイプです。数字が動くことに耐えられるほうではありません。
そして、売る側にいたときに、上限に近い金額で、当初低い金利で計算された返済表を、何度も作りました。その返済表が、5年後10年後にどう見えるかを想像してしまう癖がついています。
だから、自分の番になったときに、その想像をしなくていいほうを選びました。
これは、あなたの性格とは違うかもしれません。違っていて、まったく構わないと思います。
変動が「得」になる人は、はっきりいます
公平のために書いておきます。変動のほうが合理的な場面は、たくさんあります。
- 繰上返済ができる余力が十分にある。上がったら、まとめて減らせる
- 借入額が、収入に対して小さい。多少上がっても家計が揺れない
- 返済期間を短く設定している。上がる前に終わる可能性が高い
- 貯蓄や資産が厚い。いざとなれば一括で返せる
要するに、金利が上がったときに、行動で対応できる人です。
そしてもうひとつ、大事な条件があると思っています。
上がったときに、「損した」と思わない人。
変動が低いのは、金利が動くリスクを、借りる側が引き受けているからです。低い金利は、そのリスクを引き受けた対価として受け取っているものです。
だから、上がったときに起きているのは損ではありません。それまでが、たまたま得だっただけです。
そう受け止められて、しかも実際に払える。その状態にある人にとって、変動はきちんと「得」になります。合理的な選択です。
そして、変動を選んではいけない状態もあります
問題は、その逆の場合です。
変動や当初3年固定の金利で計算して、ようやく「これなら払えそう」だと感じている状態。
これは、リスクを引き受けられないのに、リスクを取っている状態です。
低い金利は、リスクを引き受けた対価として支払われています。引き受けられないのに受け取ってしまうと、上がったときに、対応する手段が何もありません。
ここで、ひとつ判定のしかたを書いておきます。金利の予想はまったく要りません。
全期間固定の金利で試算した返済額を見て、「これは厳しい」と感じるなら、それは金利タイプの問題ではなく、借入額が多すぎるサインです。
長期固定で払えない額を、変動なら払える。それは、払えるようになったのではなく、支払いを先送りにできる商品を選んだだけです。
だから僕は、金利タイプを決める前に、まず全期間固定で試算します。そこで無理がある額なら、金利の話をする前に、借入額のほうを見直します。
これは、僕が固定を選ぶかどうかとは、別の話です。変動を選ぶ人にとっても、借りすぎを見つける物差しとして使えます。
判断のしかたを、ひとつだけ
得か損かで悩みはじめると、答えが出ません。最初に書いたとおり、答えが出るのは払いきったその時だからです。
だから僕は、こう考えました。
「金利が上がったとき、自分は何ができるか」
- まとめて返せるお金があるか
- 収入を増やす手段があるか
- 支出を大きく削れる余地があるか
- それとも、耐えるしかないか
耐えるしかないなら、最初から上がらないほうを選ぶ。僕の結論は、それだけでした。
この問いなら、金利の予想をしなくても答えが出ます。自分の手元を見るだけで済むからです。
最後に
僕はファイナンシャルプランナーではありません。あなたにとってどちらがいいかは、わかりません。
金利のルールも、優遇の仕組みも、金融機関や商品によって違います。この記事に書いたことも、必ずご自分が借りる商品の条件でご確認ください。
ただ、ひとつだけ言えることがあります。
前の記事で、払える額を先に出す話を書きました。
その額を、いまの低い金利で計算していないか。そこだけは、確かめておく価値があると思います。
そして、ここまで書いてきて、もっと手前の話があるとも思っています。
そこまでのリスクを取らないと届かない家なら、同じ予算で、どんな賃貸が借りられるのか。
次はその話を書きます。家を売っていた人間が書くには、ずいぶん妙な話かもしれませんが。


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