アラン⑲「ストア派の知恵」5レッスン|できることに集中する

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「変えられないことに、いつも頭を悩ませてしまう」
「不運な出来事から、なかなか立ち直れない」
「心の中に、もっと頑健な軸がほしい」

こんにちは、社会福祉士・ケアマネジャーをしているしおこめパパです。3大幸福論編・アラン編⑲、テーマは「アランに学ぶストア派的な知恵5レッスン」です。

スピノザと並んで、アラン哲学のもう一つの土台が古代ギリシア・ローマのストア派です。エピクテトス、マルクス・アウレリウス、セネカ――彼らが2000年前に説いた「変えられないものを受け入れる」知恵は、アランの『幸福論』全篇にしみ込んでいます。今回はそのストア派的な知恵を、アラン経由で5つに整理してお届けします。

変えられるものと、変えられないものを見分ける。これがすべての始まり。

ケアマネ業務でいちばん大切にしているのが、「変えられること」と「変えられないこと」を仕分ける視点です。これはストア派の核であり、アランが繰り返し説いた実践でもあります。介護現場で日々確認される、人生を軽くする知恵を渡します。

アラン×ストア派の5レッスン

ここからご紹介する5つは、ストイック(禁欲的)になる話ではありません。変えられないものから自分を解放するための、ストア派的な知恵です。アランが日常レベルに翻訳した形でお届けします。

① 「変えられるもの」と「変えられないもの」を分ける

ストア派の核である「変えられないものは受け入れ、変えられるものに集中する」。これはアラン編③想像力編、⑬お金編で繰り返した「コントロール可否で仕分ける」と完全に同じ実践です。

天気、他人の評価、過去、生まれ、不運――これらは自分の課題ではない。逆に、自分の振る舞い、姿勢、声色、習慣――これらは自分の課題。後者だけに意識を集中するのがストア派の生き方。アドラー編④「課題の分離」とも完全に重なる発想です。

② 不運を「鍛錬の機会」と捉える

ストア派は「不運は人を鍛える材料である」と捉えました。困難を取り除こうとするより、困難を通して自分を鍛える。アランも同じ視点で、「逆境こそ上機嫌の修行の場」と書きました。

困難に出会ったとき、「これは私を鍛える機会」と意味づける。アドラー編⑤目的論編、⑭挫折編「過去の意味は変えられる」と同じ発想です。意味づけが変われば、困難の重さが変わる。これがストア派の最大の処方です。

③ 「今、ここ」に意識を戻す

ストア派、特にマルクス・アウレリウスは「人を苦しめるのは未来と過去、いま苦しめるものはない」と書きました。これはアラン編③想像力編とまったく同じ。意識を「いま、ここ」に戻すことが、ストア派的に生きる第一歩です。

身体の感覚に意識を戻す、目の前の動作に集中する、深呼吸を3回する――どれもストア派的な実践です。マルクス・アウレリウスの『自省録』にも、こうした実践が繰り返し出てきます。

④ 「死を想う」(メメント・モリ)

ストア派の特徴的な実践に「メメント・モリ(死を想え)」があります。死を遠ざけず、毎日意識する。すると、今日が無駄にできないことに気づく。アラン編⑫病老死編で扱った「死を考えることが生を整える」と同じ実践です。

1日1回、「もし明日が最後なら」と問う時間を持つ。重く感じる必要はありません。むしろ、今日を軽やかにするための問い。介護現場で晩年の方と関わる経験からも、この実践は人生を確実に深めると感じています。

⑤ 「徳に従って生きる」

ストア派の最終的な指針が「徳に従って生きる」。徳とは、知恵・勇気・節制・正義の4つ。難しい言葉ですが、要は「自分の中の良いものに、毎日忠実であること」。アランも、上機嫌、礼儀、誠実、節度を毎日に保つことを繰り返しました。

1日の終わりに、「今日、自分は自分の良いものに従って生きられたか」と問う。完璧でなくていい、振り返るだけで、徳は少しずつ育ちます。徳は習慣の積み重ね。これがストア派とアランが共有する核心です。

Ammonite lamp post at dusk, Lyme Regis
Photo: MichaelMaggs / CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons

アランの『幸福論』を、もっと深めたい方へ

ここまでの5つのレッスンを読んで「アランが土台にした倫理学を、原典で深く学びたい」と感じた方には、『エチカ』スピノザ著・岩波文庫もおすすめです。アランが繰り返し参照したスピノザの主著で、感情・理性・自由をめぐる哲学の決定版。難しいですが、アラン哲学を底から照らしてくれる一冊です。

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アラン哲学の根っこは「ストア派と意志の哲学」

変えられる/られないを分ける、不運を鍛錬と捉える、今ここに戻る、死を想う、徳に従って生きる――この5つは、アラン哲学の根っこにあるストア派の知恵です。2000年前と100年前の哲学が、いま私たちの毎日に効く――これが古典の力。アランは、その古典を毎日のサイズに翻訳してくれた哲学者でもありました。

ストイックになれない日があってもいい

変えられないことで悩み続けた日、不運に腐ってしまった夕方、目の前に集中できない朝――どれも、あって当然です。ストイックは完璧主義ではない。アランは「気分は習慣」と言いました。今日できなくても、明日また仕分けからやり直せば十分です。

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Photo: لا روسا / CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons

あわせて読みたい一冊

アランの哲学講義そのものを、もう一段深く読みたい方には、『哲学講義』(アラン著・中村雄二郎訳/白水iクラシックス)もおすすめです。アランの講義の核を、日本を代表する哲学者・中村雄二郎が訳した一冊。ストア派・スピノザ・カントなど、アラン哲学の源流が見えてきます。

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シリーズの今後について

次回⑳は「アラン編・中間総括──ここまでの19レッスンをぎゅっと一枚に」をお届けする予定です。①〜⑲で見てきたアラン哲学の核を、毎日に効く形で再整理します。「3大幸福論編・アラン編」はシリーズ全30回まで継続予定です。

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