愛情表現が減った夫婦へ|ふれあいが消えた二人の4哲学者の処方箋

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最後に手をつないだのは、いつだったろう。
「好き」も「ありがとう」も、言わなくなって久しい。家族にはなったけれど、恋人ではなくなった気がする。
嫌いになったわけじゃない。でも、ふたりの間から、ふんわりした温もりが消えている。

こんにちは。社会福祉士・ケアマネジャーで、40代のパパです。新シリーズ「4人の哲学者に学ぶ 暮らしの実践編」第17話のテーマは、長く連れ添った夫婦が口にしにくい「愛情表現・ふれあいが減った」という悩みです。

子育てや仕事に追われるうち、夫婦の間から自然とスキンシップや優しい言葉が減っていく——どの家庭にも起こることです。今日は、気恥ずかしさを越えて、もう一度ふたりの温もりを取り戻すための、4人の哲学者の処方箋を5つお届けします。

先に大事なことを。愛情は「自然に湧くもの」ではなく「育て続けるもの」です。放っておけば、どんな関係も少しずつ冷えていく。逆に、小さな表現を意識して続ければ、温もりはいつからでも取り戻せます。気恥ずかしさの向こうに、もう一度ふたりの距離を近づけるヒントがあります。

「愛は、落ちるものではなく、築きあげるものである」

——アドラー心理学の趣旨より

介護の現場では、人生の最終盤になって「もっと手を握っておけばよかった」と悔やむ方に出会います。ふれあいは、当たり前にあるうちは気づきにくい。でも、いちばん身近な人との温もりは、人生を支える土台です。元気な今のうちに、その温もりを少しずつ取り戻していきましょう。

ふれあいが減った二人に効く 5つの処方箋

処方箋① 好意を、惜しまず「言葉」にする(アドラー)

アドラーの「勇気づけ」は、夫婦の温もりにも効きます。長く一緒にいると、「言わなくても分かるはず」と、好意を言葉にしなくなります。でも、伝えられない好意は、ないのと同じように感じられてしまう。心の中の「ありがとう」「好き」は、口に出して初めて、相手に届きます。

大げさである必要はありません。「その服、似合うね」「今日もお疲れさま」「いてくれて助かる」。小さな好意の言葉を、一日ひとつ。気恥ずかしければ、メッセージでもいい。言葉にした好意は、相手の心を温め、その温かさは、巡り巡ってあなたにも返ってきます。

処方箋② スキンシップは「意志」で取り戻す(アラン)

アランは、幸福も愛情も「意志」でつくるものだと考えました。ふれあいが減ると、「気持ちが冷めたから」と考えがちです。でも、順序は逆のこともある。ふれあいが減ったから、気持ちも遠ざかる。だとすれば、行動から温もりを取り戻せます。

大それたことでなくていい。すれ違いざまに肩にそっと触れる。「おかえり」のときに、ぽんと背中を。出かけるときに手を振る。小さな接触を、意志を持って習慣にする。幸福だから笑うのではなく笑うから幸福になるように、ふれるから、また心が近づきます。照れくささは、最初の数回だけです。

処方箋③ 「新婚のころ」と比べない(ラッセル)

ラッセルは、比較が幸福を奪うと説きました。ふれあいが減ったと感じるとき、人は「付き合いたてのころは」「新婚のときは」と、過去のいちばん熱かった時期と今を比べてしまいます。でも、その比較は、今のふたりをいつも見劣りさせます。

燃え上がる恋の熱は、時とともに変わるのが自然です。それは「冷めた」のではなく、「落ち着いた信頼」へと形を変えただけ。過去と比べる代わりに、今ある温もり——隣で眠れる安心、何でも話せる気楽さ——に目を向ける。今のふたりにふさわしい愛の形を、新しく育てていけばいいのです。

並木道の風景
Photo: Superbass / CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons

処方箋④ 誠実に「ふたりの時間」を取り戻す(ヒルティ)

ヒルティは、誠実さと時間の使い方を重んじました。ふれあいが減る最大の原因は、たいてい「ふたりだけの時間」が生活から消えていることです。子ども中心、仕事中心の毎日で、夫婦が向き合う時間がゼロになっている。

だから、意識して「ふたりの時間」を確保する。月に一度のデート、子どもが寝たあとの15分、休日の朝のコーヒー。短くていい。その時間は、スマホを置いて、相手だけに心を向ける。誠実に、優先順位を上げて時間をつくる。温もりは、向き合う時間の中でしか育ちません。

処方箋⑤ 恋人ではなく「同志」としての親密を育てる(アドラー)

最後に、4人の知恵を束ねる視点を。アドラーの「共同体感覚」です。長年の夫婦の親密さは、燃えるような恋愛感情とは違う形をしています。それは、同じ人生を並んで歩む「同志」としての、深い信頼と連帯です。

恋人時代の熱を再現しようと焦るより、「私たちは、人生を共にする仲間だ」という親密を育てる。一緒に小さな目標を立てる、思い出を振り返る、これからを語り合う。同じ方向を向いて並ぶ感覚が戻れば、ふれあいも自然とついてきます。熟した愛は、見つめ合うことより、同じ方を一緒に見ることの中にあります。

ふたりの愛を、もう一度育て直したい方へ

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温もりは、いつからでも取り戻せる

5つの処方箋を束ねます。①好意を言葉にする(アドラー)、②スキンシップを意志で(アラン)、③新婚のころと比べない(ラッセル)、④誠実にふたりの時間を(ヒルティ)、⑤同志としての親密を育てる(アドラー)。今日は、ひとつだけ。

そもそも「ふれあいが減った」と寂しく感じるのは、まだ相手を大切に思っている証拠です。どうでもよければ、寂しさすら感じません。その寂しさは、「もう一度近づきたい」というあなたの心の声。その声に、小さな行動でひとつ応えてあげてください。温もりは、いつからでも、また育て始められます。

素直になれない日が、あってもいい

気恥ずかしくて、なかなか素直になれない日があっても、自分を責めないでください。長く一緒にいるほど、改まった愛情表現は照れくさいものです。哲学は、完璧なパートナーになるための鞭ではなく、もう一歩近づくための杖です。今日は、言葉が無理なら、隣に座る距離を少しだけ近づけてみる。それだけで、十分です。

花のクローズアップ
Photo: Andreas Eichler / CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons

あわせて読みたい一冊

処方箋②「愛情も意志でつくる」の原点を味わいたい方は、アランの『幸福論』(神谷幹夫 訳・岩波文庫)をぜひ。幸福も上機嫌も、待つものではなく自分から行動してつくるもの——その思想は、夫婦の温もりにもそのまま当てはまります。ふたりの関係を、受け身から能動へ変えるヒントをくれる名著です。

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このシリーズの今後について

「4人の哲学者に学ぶ 暮らしの実践編」は、夫婦・子育て・職場の身近な悩みに、アドラーと3大幸福論の知恵を効かせていくシリーズです。次回は子育て編「子育てに自信が持てない人への処方箋」。毎朝6時に更新していきます。今日は、パートナーに「ありがとう」を、ひとつ言葉にしてみてください。

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