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「自分の老いが気になり始めた」
「親や家族の病・死と、どう向き合えばいいか分からない」
「死というテーマに、もう少し落ち着いて向き合いたい」
こんにちは、社会福祉士・ケアマネジャーをしているしおこめパパです。3大幸福論編・アラン編⑫、テーマは「アランに学ぶ病・老い・死との向き合い方5レッスン」です。
アランは『幸福論』のなかで、病・老い・死を避けず、誰もが必ず通る道として正面から論じました。アラン自身、第一次世界大戦に従軍した経験から、生死を哲学的に深く考えた人。今回はその核を、ケアマネとしての実感も交えながら、5つに整理してお届けします。
病・老い・死は、避けるものではなく、迎え方を整えるもの。
ケアマネ業務は、文字通り「人生の終盤に並んで歩く仕事」です。多くの方の老い・病・死に立ち会ってきて確信しているのは、結局のところ「迎え方を整えていた方は、穏やかな最期を過ごす」ということ。アランの教えは、その整え方の哲学的な指針になります。
病・老い・死との向き合い方5レッスン
ここからご紹介する5つは、暗いテーマに聞こえるかもしれませんが、実は「いまをよく生きるためのレッスン」です。死を見据えるからこそ、今日が大切になる――アランはそう私たちに渡してくれます。
① 病は「事実」、不安は「想像」
③で扱った「想像力との付き合い方」を、病にも応用します。病で苦しむことの大半は、病そのものではなく、病をめぐる想像です。「もっと悪くなるかも」「働けなくなるかも」――現実より想像のほうが、ずっと重い負荷をかけてきます。
現実を冷静に見て、想像はそっと脇に置く。「今日できること」「今日感じていること」だけに意識を戻す。介護現場でも、想像と現実を分けられる方ほど、病とうまく付き合っていく印象があります。
② 老いは「衰え」ではなく「変化」
アランは老いを「衰えではなく、人生の変化」として捉えました。失うものに目を向けるか、変わっていく自分に目を向けるか――同じ事実でも、解釈で人生の手触りはまるごと変わります。アドラー編㉓「老いる勇気」と地続きの実践です。
体力は落ちる、でも経験は深まる。集中は短くなる、でも観察は鋭くなる。「失う」と「得る」のバランスで老いを見る。これはアランが100年前に渡してくれた、老いを引き受ける視点です。
③ 死を「考える」が、生を整える
アランは「死を考えることは、生を粗末にしないこと」と書きました。死を遠ざけるほど、生はかえって粗雑になる。逆に、死を意識すると、今日の一日が大切に思えてくる――これは介護現場で何度も確認した真実です。
1日5分、「もし明日が最後の日なら、今日何をするか」を考える時間を持つ。重い問いに見えますが、答えはたいてい「家族と話す」「大切な人にありがとうを言う」というシンプルなもの。それが、今日の優先順位を整えてくれます。
④ 病・老いに「身体で備える」
⑪健康編で扱った「身体を整える」が、病・老い・死への一番の備えになります。アランは「身体を粗末にしている人ほど、老いに不意打ちされる」と書きました。逆に、毎日身体を整えている人は、変化に静かに対応できます。
歩く、姿勢を伸ばす、深呼吸、よく眠る、ふつうに食べる――この5つを続けるだけで、病や老いへの抵抗力がぐっと変わります。備えは身体から。これはケアマネとしての実感とも、完全に一致します。
⑤ 「人に頼る」勇気を持つ
アランは「独りで耐えることが美徳ではない」と書きました。病や老いに直面したとき、人に頼ることは弱さではなく、賢さです。家族、友人、医療者、ケアマネ、福祉サービス――頼れるものに頼ることが、迎え方を整える知恵です。
「迷惑をかけたくない」と思うほど、結局は身近な人に重荷をかけてしまう。早めに、軽い形で頼る。これがケアマネとして毎日お伝えしている真理。頼れる関係を、元気なうちに育てておくのが、いちばんの備えです。
アランの『幸福論』を、もっと深めたい方へ
ここまでの5つのレッスンを読んで「アランの思想を、歴史と戦争の文脈で深く知りたい」と感じた方には、『アラン――戦争と幸福の哲学』(田中祐理子)がおすすめです。アランが第一次世界大戦に従軍した体験と、その後の幸福論との関係を丁寧に描いた批評書。生・死・幸福を一筋でつなぐ視点を与えてくれる一冊です。
病・老い・死は「迎え方」で景色が変わる
病を想像と分け、老いを変化として受け取り、死を考えることで生を整え、身体で備え、人に頼る勇気を持つ――この5つは全部、「迎え方を整える」実践です。誰もが通る道だからこそ、迎え方を整えておく。アランの教えは、人生後半をやわらかく支えてくれます。
病や老いを受け入れられない日があってもいい
鏡の中の自分にがっかりした朝、家族の病を直視できない夕方、死を考えるとざわざわする夜――どれも、あって当然です。受け入れられない自分を、責めないでください。アランは「気分は習慣」と言いました。受け入れも、一日にできるものではなく、毎日少しずつ。今日は受け入れられなくても、明日また向き合えれば十分です。
あわせて読みたい一冊
アランが哲学的に深く学んだ思想家・デカルトについて知りたい方には、『デカルト』(アラン著・桑原武夫・野田又夫訳/みすず書房)もおすすめです。デカルトの哲学を、アラン独自の視点で論じた古典。生・死・身体・精神についての思考の根が、より深く見えてきます。
シリーズの今後について
次回⑬は「アランに学ぶ不安・心配との付き合い方5レッスン」をお届けします。アラン流の不安対処を、現代的な実践に落として整理します。「3大幸福論編・アラン編」はシリーズ全30回まで継続予定です。
このシリーズの他の記事
- 3大幸福論編・アラン編① アラン『幸福論』入門|「幸福は作るもの」5つの基本
- 3大幸福論編・アラン編② アラン『幸福論』の核──気分・身体・行動を整える5レッスン
- 3大幸福論編・アラン編③ 想像力との付き合い方5レッスン
- 3大幸福論編・アラン編④ 怒り・不機嫌との付き合い方5レッスン
- 3大幸福論編・アラン編⑤ 行動と意志──幸福を作る決意のレッスン5
- 3大幸福論編・アラン編⑥ アラン流の人間関係──礼儀作法と他者との距離5レッスン
- 3大幸福論編・アラン編⑦ アランに学ぶ家族・夫婦の幸福5レッスン
- 3大幸福論編・アラン編⑧ アランに学ぶ子育て・教育5レッスン
- 3大幸福論編・アラン編⑨ アランに学ぶ仕事と退屈の処方箋5レッスン
- 3大幸福論編・アラン編⑩ アランに学ぶ友情の育て方5レッスン
- 3大幸福論編・アラン編⑪ アランに学ぶ健康・身体の整え方5レッスン
- 前シリーズ・アドラーの教え編㉚ 幸福についてのアドラーの教えを深掘り|次シリーズへの橋渡し


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