スマホばかりで勉強しない子|イライラする親に効く4哲学者の処方箋

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「いつまでスマホ見てるの!」「宿題は!?」——今日も同じ言葉を、何度も繰り返している。
言えば言うほど、子どもは耳をふさぎ、こちらはイライラが募る。
このままで大丈夫なのか、と不安になりながら、また「勉強しなさい」と言ってしまう。

こんにちは。社会福祉士・ケアマネジャーで、二児の父の40代パパです。新シリーズ「4人の哲学者に学ぶ 暮らしの実践編」第9話のテーマは、現代の親の最大の悩みのひとつ「スマホ・ゲームばかりで勉強しない子へのイライラ」です。

我が家でも、ゲームをめぐる攻防は日常茶飯事です。でも、「やめなさい」と言い続けても、子どもは変わらず、親だけがすり減る。今日は、ガミガミの悪循環から抜け出し、子どもの「自分で決める力」を育てる——アドラーと3大幸福論の知恵から、5つの処方箋をお届けします。

先に大事なことを。「勉強しなさい」と言うほど、子どもは勉強しなくなります。なぜなら、言われてやることは「自分の意志」ではなく「親の命令」になり、やる気の芽を奪うから。目標は、命令で動かすことではなく、子どもが「自分で決める」場面を、少しずつ取り戻すことです。

「人は、自分で決めたことにしか、本当の責任を感じない」

——アドラー心理学の趣旨より

福祉の現場で、自立を支援するとき、いちばん大切にするのは「本人が決めること」です。先回りして全部やってあげると、人は自分で考える力を失う。子育ても同じ。ガミガミの代わりに「決める機会」を手渡すことが、長い目で見て、子どもの自立を育てます。

スマホ・ゲームのイライラに効く 5つの処方箋

処方箋① 「誰の課題か」を見極める(アドラー)

アドラーの「課題の分離」は、勉強問題の核心です。「勉強するかどうか」「その結果どうなるか」は、最終的には子ども自身が引き受ける、子どもの課題です。親が代わりにテストを受けることはできません。にもかかわらず、親が全部背負うから、イライラが止まらなくなる。

とはいえ、放任しろという話ではありません。親の課題は「環境を整え、必要なときに援助できると伝えておく」こと。「やりなさい」と命令するのではなく、「困ったら、いつでも手伝うよ」と、ドアを開けて待つ。課題の線を引くと、イライラは減り、子どもは「自分の問題」として向き合い始めます。

処方箋② ガミガミの前に、親が上機嫌でいる(アラン)

アランは、上機嫌は意志だと言いました。「勉強しなさい」を不機嫌に繰り返す家は、空気が重く、子どもはますます机に向かいたくなくなります。勉強は、安心できる空気の中でこそ、手につくものです。

だから、まず家の空気を整える。ガミガミの回数を、意識して半分にする。子どもが少しでも机に向かったら、「お、やってるね」と機嫌よく声をかける。叱責より、上機嫌な家庭そのものが、子どもの集中を支えます。親が穏やかでいることは、どんな塾よりも効く、学びの環境づくりです。

処方箋③ 「勉強の損得」ではなく「面白さ」への興味を育てる(ラッセル)

ラッセルは、幸福の源を「外への、私心のない興味」に置きました。子どもがスマホやゲームに夢中なのは、そこに強い「面白さ」があるから。一方、勉強は「やらされるもの」「将来の損得」として語られがちで、面白さが抜け落ちています。

だから、「勉強しないと困るよ」という脅しより、世界の面白さへの興味を一緒に育てる。図鑑を眺める、ニュースに「なんでだろうね」と問いかける、子どもの好きなゲームの背景にある歴史や科学を話してみる。学びは、損得ではなく、興味から伸びます。そして、その興味を奪わない最大のコツが、「やらせすぎない」ことなのです。

夕暮れの海辺
Photo: JJ Harrison / CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons

処方箋④ ルールは、感情ではなく「一緒に決めた仕組み」で(ヒルティ)

ヒルティは、規律と誠実を重んじました。スマホやゲームの時間は、その場の気分で叱るより、前もって「一緒に決めたルール」で運用するほうが、はるかに効きます。親の機嫌次第で変わる基準は、子どもを混乱させ、反発を生みます。

大切なのは、ルールを「親が押しつける」のではなく、「一緒に決める」こと。「ゲームは何時まで?」を子どもと話し合い、本人に決めさせる。自分で決めたルールは、守る責任も生まれます。そして親自身も、家族の前でスマホばかり見ない——誠実な背中を見せる。仕組みと誠実さは、ガミガミ百回より効きます。

処方箋⑤ できていないことより「やれたこと」を勇気づける(アドラー)

最後に、4人の知恵を束ねる視点を。アドラーの「勇気づけ」です。「まだ宿題やってないの!」という叱責は、子どもに「自分はダメだ」を刷り込みます。やる気を奪われた子は、ますます逃避(スマホ・ゲーム)に向かう。これが悪循環の正体です。

だから、欠けているところより、進んだところに光を当てる。「昨日より10分早く始められたね」「自分で時間を決められたね」。小さな「やれた」を勇気づけられた子は、「自分はやれる」という自信を取り戻し、自分から机に向かう力を育てます。ゲームより面白い「できた!」の感覚を、家庭の中で増やしていきましょう。

子どもの「自分で決める力」を、もっと育てたい方へ

子どもの自立心を育てたい方には、齋藤孝さんの『自分で決められる人になる!超訳こども「アドラーの言葉」』(KADOKAWA)がおすすめです。アドラーの考え方を、子ども自身にも分かる言葉で伝える一冊。親子で一緒に読めて、「自分で決める」「自分を信じる」力を、押しつけずに育てるきっかけになります。

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イライラするのは、子の将来を思うから

5つの処方箋を束ねます。①誰の課題かを見極める(アドラー)、②ガミガミの前に上機嫌(アラン)、③損得より面白さへの興味(ラッセル)、④一緒に決めた仕組みで(ヒルティ)、⑤やれたことを勇気づける(アドラー)。今日は、ひとつだけ。

そもそも、スマホやゲームにイライラするのは、子どもの将来を本気で心配しているからです。その愛情は本物。ただ、心配が「命令」や「叱責」として出ると、子どものやる気を奪ってしまう。同じ愛情を、「信じて、決めさせて、見守る」という形に変える。それが、子どもの自立を育てる、いちばんの近道です。

つい言い過ぎる日が、あってもいい

つい「勉強しなさい!」と言い過ぎてしまう日があっても、自分を責めないでください。子どもの将来を思うからこそ、口が出る。哲学は、完璧な親になるための鞭ではなく、明日もう一度信じ直すための杖です。今日は、勉強の話を一回お休みして、子どもの好きなゲームの話でも聞いてみる。それだけで、明日の机が、少し近くなります。

穏やかな港の風景
Photo: Jebulon / CC0 via Wikimedia Commons

あわせて読みたい一冊

処方箋③「私心のない興味」の原点を味わいたい方は、ラッセルの『幸福論』(安藤貞雄 訳・岩波文庫)をぜひ。外の世界への幅広い興味こそが、人生を豊かにし、退屈や逃避から人を遠ざける——その知恵が、静かな説得力で語られます。子どもの「面白い!」を育てたい親自身が、まず読んでおきたい一冊です。

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もっと体系的に学びたい・誰かに相談したい方へ

「叱る・命令する」から「信じて任せる」子育てへ。その土台になるアドラー心理学を体系的に学び直したい方には、資格講座という選択肢もあります。子どもの自立を支える声かけが、独学よりも順序立てて身につきます。もっとアドラー心理学を極めたい方はこちら↓。

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そして、もし「イライラが抑えられない」「子どもとの関係がこじれてつらい」と感じるなら——専門家に話すのは弱さではなく賢さです。親が気持ちを整理できると、子どもへの関わりも変わります。オンラインで顔出しなしに話せるカウンセリングもあります。「まだ大丈夫」のうちが、いちばん効くタイミングです。

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このシリーズの今後について

「4人の哲学者に学ぶ 暮らしの実践編」は、夫婦・子育て・職場の身近な悩みに、アドラーと3大幸福論の知恵を効かせていくシリーズです。次回は職場編「評価されない・頑張っても報われないと感じる人への処方箋」。毎朝6時に更新していきます。今日は、勉強の話をひと休みして、子どもの好きな話を聞いてみてください。

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