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朝、布団から出てこない子が、小さな声で「学校、行きたくない」。
無理に行かせていいのか、休ませていいのか。友達とうまくいっていないのか、いじめられていないか。
聞いても多くを語らない我が子を前に、胸の奥がぎゅっと締めつけられる。
こんにちは。社会福祉士・ケアマネジャーで、二児の父の40代パパです。新シリーズ「4人の哲学者に学ぶ 暮らしの実践編」第15話のテーマは、親の胸を最も痛める悩みのひとつ「登校しぶり・友達関係への不安」です。
この問題は、正解が一つではなく、親もどうしていいか分からなくなります。今日は、子どもを追い詰めず、味方であり続けるための、4人の哲学者の処方箋を5つお届けします。なお、いじめや心身の不調が疑われる場合は、ひとりで抱えず、早めに学校やスクールカウンセラー、専門機関に相談してください。
先に、いちばん大事なことを。「行きたくない」は、わがままではなくSOSです。子どもは、行けるなら行きたい。それでも行けないほどの何かを抱えている。だから目標は、無理に学校へ戻すことではなく、まず子どもの「安全基地」になり、心の力を取り戻させることです。
「人は、安心できる居場所があってはじめて、外の世界へ踏み出せる」
——アドラー心理学の趣旨より
福祉の現場では、追い詰められた末に心を閉ざしてしまう子も、安心できる大人が一人いるだけで、少しずつ力を取り戻していく姿を見てきました。子どもにとって、その「一人」になれるのは、たいてい親です。解決を焦るより、まず安心を渡す。それが回復の最短ルートです。
不安をかかえる子を支える 5つの処方箋
処方箋① 無理に行かせず、まず「味方」になって勇気づける(アドラー)
アドラーは「勇気づけ」を重んじました。登校しぶりの子に「なんで行けないの」と問い詰めると、子どもは「行けない自分はダメだ」とさらに自信を失います。今、子どもに必要なのは、叱咤ではなく、しぼんだ心の力を取り戻す勇気づけです。
「行けなくても大丈夫。あなたの味方だよ」。まずそう伝える。そして、行く・行かないという結末は最終的に子どもの課題だと心に留めつつ、親は安全基地として支える。学校に行けた日は「よく行けたね」、行けない日は「今日はゆっくり休もう」。どちらの日も否定しない。勇気づけられた子は、自分のペースで、また一歩を踏み出せるようになります。
処方箋② 親の不安を、子に伝染させない(アラン)
アランは、感情は伝染すると言いました。親が「どうしよう」と深刻な顔をしていると、その不安は子どもに伝わり、「自分は親を困らせる存在だ」と、よけいに追い詰められます。子どもは、親の表情を敏感に読み取っています。
もちろん、親が不安なのは当然です。だからこそ、その不安は子どもの前ではなく、パートナーや専門家など「大人どうし」で受け止め合う。子どもの前では、できるだけ穏やかに、いつも通りに。家を、評価も詰問もない、安心して息ができる場所にする。家庭の上機嫌は、子どもが回復するための、いちばんの土壌です。
処方箋③ 漠然とした不安の「正体」を、一緒に言葉にする(ラッセル)
ラッセルは、漠然とした不安は、正体に名前をつければ半分は小さくなると説きました。子どもの「行きたくない」も、本人すら正体が分からないことが多い。何が、どう、つらいのか。それが言葉にならないまま、大きな塊になっています。
だから、問い詰めずに、そっと言葉にする手伝いをする。「朝がしんどい? 給食? それとも、誰かのこと?」と、選択肢をやさしく示してあげる。無理に話させず、子どもが話せるときを待つ。正体に名前がつくと、漠然とした恐怖は「対処できる具体的な困りごと」に変わります。名づけは、回復への最初の一歩です。

処方箋④ 解決を急がず、誠実に寄り添って「待つ」(ヒルティ)
ヒルティは、誠実さと忍耐を重んじました。親はつい、早く元通りにしたくて、解決を急ぎます。でも、子どもの心の回復には、それぞれの時間が必要です。急かされるほど、子どもは追い詰められ、回復は遠のきます。
誠実に寄り添うとは、答えを急がず、味方であり続けること。すぐに学校へ戻すことをゴールにせず、「あなたが元気を取り戻すこと」を真ん中に置く。フリースクールや保健室登校、家庭学習など、道は一つではありません。誠実に、しかし焦らず、信頼して待つ。その姿勢そのものが、子どもにとって何よりの支えになります。
処方箋⑤ 「学校が全てではない」——居場所をつくる(アドラー)
最後に、4人の知恵を束ねる視点を。アドラーの「共同体感覚」——自分には居場所があり、誰かとつながっているという感覚です。学校に行けないと、子どもは「自分はどこにも居場所がない」と感じがちです。でも、居場所は学校だけではありません。
家庭という安全な居場所、好きなことに打ち込める時間、わかってくれる人とのつながり。「学校が全てではない。あなたには、ちゃんと居場所がある」と伝え、実際にそういう場を一緒に探す。一つの場所に行けなくても、世界は広い。その安心が戻ったとき、子どもは自分のタイミングで、また外の世界へ歩き出せます。
勇気づけの関わりを、もっと学びたい方へ
子どもの心の力を支える「勇気づけ」を体系的に学びたい方には、岩井俊憲さんの『勇気づけの心理学』(金子書房)がおすすめです。叱るでも、ほめるでもなく、相手の「自分でやれる力」を信じて支える関わり方を、アドラー心理学の視点で深く解説した一冊。不安を抱える子に寄り添うための、確かな土台になります。
「行きたくない」と言えたのは、信頼の証
5つの処方箋を束ねます。①無理に行かせず勇気づける(アドラー)、②親の不安を伝染させない(アラン)、③不安の正体を一緒に言葉に(ラッセル)、④解決を急がず誠実に待つ(ヒルティ)、⑤学校が全てではない・居場所をつくる(アドラー)。今日は、ひとつだけ。
そもそも、子どもが「行きたくない」と親に言えたのは、あなたを信頼している証拠です。本当に孤独な子は、SOSすら出せません。その小さなSOSを受け止められたなら、あなたはもう、子どもの安全基地になれています。あとは、焦らず、味方であり続けるだけです。
どうしていいか分からない日が、あってもいい
どう支えればいいか分からず、途方に暮れる日があっても、自分を責めないでください。この問題に、すぐ効く魔法はありません。哲学は、完璧な親になるための鞭ではなく、しんどい日に寄り添う杖です。そして、抱えきれないときは、必ず誰かに相談してください。子どもを支えるあなた自身も、支えられていいのです。

あわせて読みたい一冊
処方箋②「親の上機嫌」の原点を味わいたい方は、アランの『幸福論』(神谷幹夫 訳・岩波文庫)をぜひ。不安に飲み込まれず、心の平静を意志で保つ知恵が、短い断章で胸に届きます。子どもの不安に向き合う前に、親自身が心を整える——その支えになる一冊です。
もっと体系的に学びたい・誰かに相談したい方へ
子どもの心の力を信じて支える——その土台になるアドラー心理学を体系的に学び直したい方には、資格講座という選択肢もあります。勇気づけの関わり方が、独学よりも順序立てて身につきます。もっとアドラー心理学を極めたい方はこちら↓。
そして、登校しぶりやいじめ、子どもの心の不調は、家庭だけで抱え込まないでください。学校のスクールカウンセラー、自治体の相談窓口、専門のカウンセリングなど、頼れる場所があります。親自身がしんどいときも、話を聞いてもらうことで力が戻ります。オンラインで顔出しなしに話せる相談もあります。早めの相談が、いちばんの近道です。
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このシリーズの今後について
「4人の哲学者に学ぶ 暮らしの実践編」は、夫婦・子育て・職場の身近な悩みに、アドラーと3大幸福論の知恵を効かせていくシリーズです。次回は職場編「頼まれると断れない・キャパオーバーな人への処方箋」。毎朝6時に更新していきます。今日は、子どもに「あなたの味方だよ」と、ひとこと伝えてみてください。

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