ワンオペ感に疲れた夫婦へ|家事・育児の不満に効く4哲学者の処方箋

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洗濯物をたたみながら、ふと思う。「どうして、いつも私ばかり」。
頼めばやってくれる。でも、頼まなければ気づかない。その「気づかなさ」に、いちばん疲れる。
感謝されるどころか「やってあげてる」感すら出されて、言葉を失う夜がある。

こんにちは。社会福祉士・ケアマネジャーで、家事も育児も奮闘中の40代パパです。新シリーズ「4人の哲学者に学ぶ 暮らしの実践編」第8話のテーマは、共働き・子育て世代を消耗させる「家事・育児の分担への不満(ワンオペ感)」です。

正直に書くと、我が家でも、分担をめぐる不満が積もって、冷たい空気になったことがあります。ワンオペ感のつらさは、作業量だけではない。「見てもらえていない」「ひとりで背負っている」という孤独が、いちばん重い。今日は、その不満を「責め合い」ではなく「対話」に変える、4人の哲学者の処方箋を5つお届けします。

先に大事なことを。分担の不満は、わがままではありません。それは「一緒にこの家を回したい」という、健全な願いの裏返しです。問題は、不満を「我慢」か「爆発」かの二択で抱えてしまうこと。その間にある「対話」という第三の道を、哲学が教えてくれます。

「重荷は、二人で担げば半分になる。担い方を、誠実に話し合えるなら」

——ヒルティ『幸福論』の趣旨より

介護の現場でも、家族の負担が一人に偏ると、その人が倒れ、家庭そのものが回らなくなるのを何度も見てきました。「分担」は、公平さの問題であると同時に、家庭を持続させる土台です。だからこそ、我慢で抱え込まず、ちゃんと話す。それは利己ではなく、家族を守る行為です。

ワンオペ感に効く 5つの処方箋

処方箋① 家事育児を「共同の課題」として可視化する(アドラー)

アドラーは、二人で取り組むべきことを「共同の課題」と呼びました。ワンオペ感が生まれるのは、家事育児が「気づいた人(多くは片方)の課題」になっているから。もう一方には、そもそも「何が、どれだけあるか」が見えていないことが多いのです。

だから、まず「見える化」する。名もなき家事を紙やアプリに書き出し、二人で眺める。「こんなにあったの?」と相手が驚いたら、それは半分前進です。責めるためではなく、「これ、私たちの共同の課題だよね」と並べて見るため。見えないものは分担できません。可視化は、ワンオペ脱出の第一歩です。

処方箋② 不満は「不機嫌」ではなく「上機嫌な相談」で出す(アラン)

アランは、不機嫌は人を遠ざけ、上機嫌は人を動かすと言いました。ワンオペの不満は、ためにためて、不機嫌な「攻撃」として爆発しがちです。でも、不機嫌で出された要求に、人は素直に応じられません。身構えて、言い訳が先に立つ。

同じ要求でも、機嫌よく、相談として出すと、相手は動きやすくなります。「責める」のではなく、「助けてほしい」と上機嫌に頼む。「これ、一緒にやってくれたら、すごく助かるんだけどな」。難しいのは分かります。でも、爆発の前に、上機嫌な相談を一回挟むだけで、相手の反応はまるで変わります。上機嫌は、最強の交渉術です。

処方箋③ 「よその家」と比べる苦しさを手放す(ラッセル)

ラッセルは、比較を不幸の源と説きました。ワンオペ感は、SNSで「家事を手伝う理想の夫」「協力的な妻」を見るたびに、深まります。「よその家はうまくやっているのに、うちは」。比較は、自分の家庭の現実を、いつも一段下に見せます。

でも、SNSに映るのは、その家の「いちばんいい瞬間」だけ。比べる相手は、よその理想ではなく、「うちの先月」でいい。「先月より、ゴミ出しはやってくれるようになった」。小さな前進を数えると、不満の総量は減ります。比較を手放すと、相手の足りなさより、すでにある協力が見えてきます。

穏やかな野原の風景
Photo: Kreuzschnabel / CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons

処方箋④ 感情的な瞬間を避け、誠実に「会議」を持つ(ヒルティ)

ヒルティは、誠実さと、物事を整えて進めることを重んじました。分担の話を、疲れ果てた夜や、けんかの最中にすると、ただの感情のぶつけ合いになります。大事な話ほど、整えた場で、誠実に。

おすすめは、週に一度の短い「家族会議」。お互い落ち着いているときに、お茶でも飲みながら、「今週どうだった?」「来週どう分ける?」を10分だけ話す。感情ではなく、運営の相談として。誠実に、定期的に。これを習慣にすると、不満は爆発する前に、小さなうちに調整されます。会議は、ワンオペ感への、いちばん地味で確実な処方です。

処方箋⑤ 「やってくれたこと」を勇気づけ、チームに戻す(アドラー)

最後に、4人の知恵を束ねる視点を。アドラーの「勇気づけ」と「共同体感覚」です。分担を増やしたいとき、つい「できていないこと」を指摘しがちです。でも、ダメ出しは相手のやる気を奪い、ますます動かなくなる。逆効果なのです。

そこで、小さくてもやってくれたことに「ありがとう、助かった」と光を当てる。勇気づけられた人は、もっと貢献したくなります。そして「あなたが手伝ってくれて、私たち、いいチームだね」と、二人を「私たち」というチームに戻す。ワンオペは「孤独」の問題。「私たち」の感覚が戻れば、同じ作業量でも、ぐっと軽くなります。

仕事も家庭も、もっと両立させたい方へ

仕事と家庭の両方をうまく回したい方には、熊野英一さんの『アドラー式働き方改革 仕事も家庭も充実させたいパパのための本』(小学館クリエイティブ)がおすすめです。家事育児を「手伝う」から「共に担う」へと変える発想が、アドラー心理学の視点で具体的に語られた一冊。パパにもママにも、分担の対話のヒントが見つかります。

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不満は、家族を続けたい気持ちの裏返し

5つの処方箋を束ねます。①共同の課題として可視化(アドラー)、②上機嫌な相談で出す(アラン)、③よその家と比べない(ラッセル)、④誠実に家族会議を持つ(ヒルティ)、⑤やってくれたことを勇気づける(アドラー)。今日は、ひとつだけ。

分担への不満は、相手を嫌っているからではありません。「この人と、ちゃんとこの家庭を続けたい」と思っているからこそ、湧いてくる。不満は、あきらめていない証拠です。だからその気持ちを、我慢でも爆発でもなく、「一緒にやろう」という対話に変える。それができれば、不満はチームを強くする燃料になります。

うまく分け合えない日が、あってもいい

分担がうまくいかず、不公平にイライラする日があっても、自分を責めないでください。完璧な分担は、どの家庭にも存在しません。哲学は、理想の夫婦になるための鞭ではなく、今のふたりで折り合うための杖です。今日は、家事をひとつ手抜きして、自分を労う時間に変えてしまいましょう。あなたが倒れないことが、家族にとっていちばん大切です。

静かな海辺の風景
Photo: Michal Klajban / CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons

あわせて読みたい一冊

処方箋④「誠実に整えて進める」の原点を味わいたい方は、ヒルティの『幸福論』(草間平作・大和邦太郎 訳・岩波文庫)をぜひ。誠実に、こつこつと物事を積み上げることの力を、静かな言葉で教えてくれる名著です。家庭の運営も、感情の勢いではなく、誠実な習慣で回り始める——そんな気づきをくれる一冊です。

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もっと体系的に学びたい・誰かに相談したい方へ

家庭運営に効くアドラー心理学を体系的に学び直したい方には、資格講座という選択肢もあります。「手伝う」から「共に担う」へ。家族をチームに変える視点が、独学よりも順序立てて身につきます。もっとアドラー心理学を極めたい方はこちら↓。

アドラー心理学資格講座

そして、もし不満が積もって、二人だけでは話し合いにならないと感じたら——専門家に間に入ってもらうのは賢い選択です。第三者がいるだけで、感情的にならずに本音を伝え合えることがあります。オンラインで顔出しなしに話せる夫婦カウンセリングもあります。「まだ大丈夫」のうちが、いちばん効くタイミングです。

公認心理師によるオンライン心理カウンセリングKimochi

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このシリーズの今後について

「4人の哲学者に学ぶ 暮らしの実践編」は、夫婦・子育て・職場の身近な悩みに、アドラーと3大幸福論の知恵を効かせていくシリーズです。次回は子育て編「スマホ・ゲーム・勉強しない子へのイライラの処方箋」。毎朝6時に更新していきます。今日は、名もなき家事を、ひとつ書き出してみてください。

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