義実家との板挟みがつらい人へ|親との関係に効く4哲学者の処方箋

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義実家に行くたびに、なぜか心がすり減る。
「あなたの親なんだから、あなたが言ってよ」「いや、角が立つだろ」——気づけば、親のことで夫婦がもめている。
誰も悪気はない。なのに、板挟みになった自分だけが、いつも消耗していく。

こんにちは。社会福祉士・ケアマネジャーとして、たくさんのご家庭の「親世代との関係」に立ち会ってきた、40代のパパです。新シリーズ「4人の哲学者に学ぶ 暮らしの実践編」第11話のテーマは、多くの夫婦を静かに疲れさせる「義実家・親との板挟み」です。

白状すると、我が家でも、親との距離感をめぐって、夫婦の間に冷たい空気が流れたことがあります。親世代との問題は、こじれると夫婦の溝になりやすい。今日は、親との距離をラクにし、夫婦が同じ側に立つための、4人の哲学者の処方箋を5つお届けします。

先に大事なことを。板挟みのつらさの正体は、たいてい「親の問題」ではなく「夫婦の連携不足」です。親をどう変えるかより、まず夫婦が「私たち」として足並みをそろえる。そこさえ整えば、親との距離は驚くほど扱いやすくなります。

「すべての悩みは、対人関係の悩みである」

——アルフレッド・アドラー

介護の現場では、親世代との関係が長年こじれたまま、要介護期を迎えるご家庭をたくさん見てきました。早いうちに「適度な距離」を見つけられた家族は、いざという時もしなやかです。親との関係は、我慢でも断絶でもなく、「ちょうどいい距離」を設計することが鍵になります。

親との板挟みに効く 5つの処方箋

処方箋① 「親を変える」は手放し、自分の課題に集中する(アドラー)

アドラーの「課題の分離」は、親との関係でこそ効きます。親の性格や価値観、口の出し方を変えることは、あなたの課題ではありません。何十年も生きてきた人を変えるのは、ほぼ不可能。そこに力を注ぐほど、消耗します。

あなたの課題は、「親をどう変えるか」ではなく、「自分たち夫婦が、どう振る舞うかを決めること」。親の言動に振り回されるのをやめ、「うちはこうする」と自分たちの方針を持つ。変えられない親を変えようとする戦いから降りた瞬間、肩の荷が、すっと軽くなります。

処方箋② 義実家でこそ、礼儀を「技術」として使う(アラン)

アランは、礼儀作法を、心を守るための技術だと考えました。義実家は、気を使う相手だからこそ、不機嫌が伝染しやすい場所です。でも、礼儀正しく、上機嫌に振る舞うことは、相手におもねることではなく、自分の心の平和を守る盾になります。

にこやかに挨拶し、感謝を言葉にする。けれど、内心まで明け渡す必要はない。礼儀という「形」を整えておけば、相手のペースに飲み込まれず、適度な距離を保てます。上機嫌は、義実家という気疲れする場で、あなたを守るいちばん上品な武器です。

処方箋③ 「よその家」「ほかの嫁・婿」と比べない(ラッセル)

ラッセルは、比較こそ不幸の源だと説きました。親との関係でも、「よその家はもっと仲がいい」「あの人はうまくやっている」と比べた瞬間、自分の家庭が一段下に見えてしまいます。SNSに並ぶ理想の家族写真は、その毒を強めます。

でも、親子関係の「正解」は、家ごとに違います。距離の近い家もあれば、遠くてちょうどいい家もある。よその家と比べるのをやめ、「うちはうちの距離でいい」と決める。比較を手放すと、義実家との関係に求める理想のハードルが下がり、気持ちがふっとラクになります。

穏やかな入り江の風景
Photo: Ggia / CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons

処方箋④ 誠実に、しかし「境界線」を引く(ヒルティ)

ヒルティは、誠実さを重んじました。親に対して誠実であることは大切です。でも、誠実さは「すべての要求に応えること」ではありません。親の期待のすべてに応えようとすると、あなたも夫婦も、いつか限界を迎えます。

誠実に向き合いながら、引くべき境界線は引く。「これはできるが、これはできない」を、穏やかに、しかしはっきり伝える。境界線は、冷たさではなく、長く良い関係を続けるための優しさです。すべてに応えて潰れるより、できる範囲で誠実に付き合うほうが、結局は親も安心します。

処方箋⑤ 親より先に、夫婦が「私たち」で一枚岩になる(アドラー)

最後に、4人の知恵を束ねる視点を。アドラーの「共同体感覚」です。板挟みがいちばんつらいのは、夫婦がバラバラで、片方が一人で親と向き合わされているときです。逆に、夫婦が「私たち」として一枚岩なら、親との問題は、二人で担う「共同の課題」に変わります。

だから、親に何かを伝える前に、まず夫婦で作戦会議をする。「私たちは、親とどう付き合いたい?」を二人ですり合わせ、窓口や役割を決める。自分の親には自分が、を基本に、二人で守る。親より先に、夫婦が同じ側に立つ。これが、板挟みから抜け出す、いちばん深い処方です。

親世代との付き合い方を、もっと深めたい方へ

年老いていく親との距離に悩む方には、熊野英一さんの『アドラー式 老いた親とのつきあい方』(小学館クリエイティブ)がおすすめです。変えられない親に振り回されず、課題を分離しながら穏やかに付き合うヒントが、アドラー心理学の視点で語られた一冊。介護が始まる前に読んでおきたい実践書です。

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板挟みは、両方を大切にしたい証拠

5つの処方箋を束ねます。①親を変えるのを手放す(アドラー)、②義実家でこそ礼儀を技術に(アラン)、③よその家と比べない(ラッセル)、④誠実に、しかし境界線を引く(ヒルティ)、⑤親より先に夫婦が一枚岩に(アドラー)。今日は、ひとつだけ。

そもそも板挟みになるのは、親もパートナーも、どちらも大切にしたいからです。その優しさは本物。ただ、一人で全部背負うと潰れてしまう。だから、その重荷を夫婦で半分こにする。親を大切にする前に、まず隣にいるパートナーと手をつなぐ。それが、結局は親との関係もやわらげます。

うまく立ち回れない日が、あってもいい

親との間でうまく立ち回れず、モヤモヤする日があっても、自分を責めないでください。親子の関係は、長い歴史があり、一朝一夕には変わりません。哲学は、完璧に振る舞うための鞭ではなく、しんどい日をやり過ごすための杖です。今日は、親のことを少し横に置いて、パートナーと温かいお茶でも飲んでください。

夕暮れの木のシルエット
Photo: Wilfredor / CC0 via Wikimedia Commons

あわせて読みたい一冊

処方箋②「礼儀を技術として使う」の原点を味わいたい方は、アランの『幸福論』(神谷幹夫 訳・岩波文庫)をぜひ。上機嫌や礼儀を「意志でつくるもの」として語る名著で、気疲れする相手の前でも心の平和を守る知恵が、短い断章で胸に届きます。義実家へ向かう前に一節読むと、肩の力が抜けます。

▶ アラン『幸福論』(岩波文庫)をAmazonで見る

もっと体系的に学びたい・誰かに相談したい方へ

処方箋①と⑤で土台にしたアドラー心理学を、家庭でも仕事でも効く形で体系的に学び直したい方には、資格講座という選択肢もあります。「変えられない相手」と上手に距離を取る考え方が、独学よりも順序立てて身につきます。もっとアドラー心理学を極めたい方はこちら↓。

アドラー心理学資格講座

そして、もし親との関係や夫婦のすれ違いが、自分たちだけでは抜け出せないと感じたら——専門家に話すのは弱さではなく賢さです。第三者がひとり入るだけで、こじれた家族の結び目が、するりとほどけることはよくあります。オンラインで顔出しなしに話せる相談もあります。「まだ大丈夫」のうちが、いちばん効くタイミングです。

公認心理師によるオンライン心理カウンセリングKimochi

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このシリーズの今後について

「4人の哲学者に学ぶ 暮らしの実践編」は、夫婦・子育て・職場の身近な悩みに、アドラーと3大幸福論の知恵を効かせていくシリーズです。次回は子育て編「反抗期・言うことを聞かない子への処方箋」。毎朝6時に更新していきます。今日は、親のことを夫婦で一度、ゆっくり話してみてください。

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