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何かに夢中になるとき、つい「これは何の役に立つか」と考えてしまう。
気がつくと、すべての興味が「自分の利害」と結びついている。
純粋に「ただ好きだから」と言える時間が、最近少ない気がする。
こんにちは、社会福祉士・ケアマネジャーをしているしおこめパパです。3大幸福論編・ラッセル編⑮、テーマは「ラッセルに学ぶ私心のない興味5レッスン」です。前回の「仕事」に続いて、今回は仕事や家族とは別の、もう少し風通しのいい話──自分の損得を離れて夢中になれる、そんな興味の役割について、ラッセルとともに考えます。
ラッセルは『幸福論』のなかで、「私心のない興味(impersonal interests)」を、幸福を支える静かな柱の一本として位置づけました。彼が言う私心のない興味とは、「自分の利害得失と直接結びつかない、ただ楽しめるもの」のこと。スポーツ観戦、星空、歴史、植物、文学、音楽、知らない国の文化。──こうした「自分以外の世界」に向かう興味が、人生の重さをふっと軽くしてくれる、というのが彼の見立てです。
自分の損得から離れた興味は、嵐の日に逃げ込めるシェルターになる。
ケアマネとして印象的だったのは、晩年に至っても表情豊かなご高齢の方の多くが、「自分の損得とは関係ない好きなもの」を持っておられたことです。庭の花、地域の野球チーム、戦時中から続く愛唱歌、近所の野良猫の観察。──いずれも、お金にも肩書きにもなりません。けれど、その「役に立たない好き」が、毎日に小さな光をくれる。私心のない興味は、年齢や役割が変わっても残る、人生の隠れた支えだと、現場でしばしば教えていただきました。
ラッセルに学ぶ私心のない興味5レッスン
私心のない興味を、日々の中に育てるために。ラッセルが教えてくれる5つの視点をお伝えします。
① 「自分の利害」と切り離した興味を持つ
ラッセルは、幸福のためには「自分の利害に直結しない興味」を最低ひとつは持っておくべきだ、と言いました。仕事のためでもなく、家族のためでもなく、「ただ好きだから知りたい」「ただ楽しいから眺めたい」と思えるもの。これが一つあるかないかで、人生の風通しはずいぶん変わります。
「これがあるとどんな得があるか」を考えずに、自然と気持ちが向くもの。それを一つ、リストにしてみましょう。プロ野球のひいきチーム、天気予報を眺める時間、季節の花の名前、好きな漫画の続き。どんなに小さくて構いません。「これは利害と関係ない、ただ好き」と言える対象を、自分のなかに一つ確保しておく。これが第一歩です。
② 「役に立つかどうか」を一度脇に置く
現代に生きていると、私たちはあらゆることに「役に立つかどうか」を問いがちです。読書も、運動も、人間関係も、ついコスパで測ってしまう。ラッセルは、こうした「役に立つかどうか」の物差しを、ときどき脇に置く時間が、幸福にとって決定的に大切だと言いました。
「役に立たないけど好き」を、堂々と楽しむ時間を作ってみる。アニメを見る、ぼーっと空を眺める、興味の赴くままにウィキペディアを読む、好きな散歩道を理由なく歩く。──こうした、誰のためでもない、生産性とは無縁の時間は、心に静かな余白を作ってくれます。役に立たない時間こそ、後から効いてくる栄養なのです。
③ 仕事や家族と「別系統」の窓を作る
ラッセルは、仕事や家族と直接つながらない興味こそ、心の安全装置になると考えました。仕事のことばかり、家族のことばかりで頭が占められていると、そのどちらかでつまずいたとき、世界全体が真っ暗になってしまいます。だから別の系統の窓を、いくつか開けておきたい。
趣味、地域活動、好きなスポーツチーム、SNSで追いかけている専門家のアカウント、季節の自然観察。──仕事と家族から少し離れたところに、自分専用の関心の窓を持っておきましょう。仕事で疲れた日、家族とちょっとぎくしゃくした日、そこに逃げ込んで一息つける窓があると、人生はずいぶん耐えやすくなります。
④ 「自分より大きいもの」に触れる時間を持つ
ラッセルは、私心のない興味のなかでも特に、「自分より大きいもの」に触れる体験を高く評価しました。歴史、自然、宇宙、芸術、長く生きた木、何千年も前の星の光。──こうした自分よりずっと大きく、ずっと長いものに触れると、自分の悩みが少しだけ縮んで見えます。
夜空を見上げる時間を月に何度か持ってみる。神社の大木を見にいく。博物館で何百年も前の道具に触れる。図書館で歴史の本のページをめくる。──こうした体験は、その場では何も解決しないように見えますが、不思議なことに、帰り道には「まあ、いいか」と少し肩の力が抜けています。「自分より大きいもの」は、悩みのサイズを正してくれる視点なのです。
⑤ 私心のない興味は、嵐の日のシェルター
ラッセルが最も力を込めて伝えたのは、「私心のない興味は、人生の嵐の日に逃げ込めるシェルターになる」ということでした。仕事を失ったとき、人間関係でつまずいたとき、家族のことで心配が尽きないとき。──そんなとき、自分の利害と無関係な「好き」が一つあると、そこに一時的に避難して、息を整えることができます。
だから、嵐が来ていない今のうちに、いくつかシェルターを用意しておきたい。今夢中なものはなくても、「ちょっと気になっていること」を一つ二つ、メモしておくだけでも違います。気が向いたときに少し覗き、少しずつ親しくなっていく。いざというとき、その小さな興味が、思いがけず大きな支えになってくれます。

ラッセルの『幸福論』を、もっと深めたい方へ
ここまでの5つのレッスンを読んで「ラッセルの分析を、解説付きで読みたい」と感じた方には、『幸福論』(バートランド・ラッセル著・堀秀彦訳/角川ソフィア文庫)がおすすめです。各章の要約付きで、私心のない興味の章も読みやすく整理されています。
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私心のない興味は、人生の風通し
私心のない興味についてラッセルが教えてくれることをまとめると、「自分の損得から離れた好きを、一つでも持っておくこと」が、人生の風通しを保つ鍵だということに尽きます。利害と無関係な対象を持ち、役に立つかどうかを脇に置き、仕事や家族とは別系統の窓を作り、自分より大きいものに触れる。──これらは派手な活動ではありませんが、毎日に静かな余白を運んでくれます。
「好きなもの」が思い浮かばない日があってもいい
もちろん、忙しさや疲れの中で、「好きなものなんて思い浮かばない」という日もあります。そういうときは、無理に趣味を持とうとせず、目に入ったもののなかで「これ、ちょっといいな」と思えたものを一つ書き留めておくところから始めましょう。雨の音、コンビニの新作スイーツ、子どもや孫の何気ない笑い声。──そんな小さな「いいな」が、私心のない興味の最初の種になります。

あわせて読みたい一冊
マンガで気軽に学びたい方には、『まんがでわかる ラッセルの『幸福論』の読み方』(小川仁志/宝島社)もおすすめです。書店勤務の主人公がラッセルを通して幸福を探していくストーリー仕立てで、私心のない興味の章も楽しく辿れる入口になります。
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シリーズの今後について
次回⑯は「ラッセルに学ぶ努力と諦めのバランス5レッスン」をお届けします。頑張りどころと、力を抜きどころ。その見分け方について、ラッセルとともに考えます。「3大幸福論編・ラッセル編」はシリーズ全30回まで継続予定です。
このシリーズの他の記事
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- 3大幸福論編・ラッセル編③ ラッセルに学ぶ幸福をもたらすもの5レッスン
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