ラッセル⑱「不安との付き合い方」5レッスン|眠れない夜の処方箋

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夜中、ふっと目が覚めて、漠然とした不安に押しつぶされそうになる。
原因がはっきりしないのに、胸の奥がざわざわする。
朝までに、この不安と少しでもうまく距離を取りたい。

こんにちは、社会福祉士・ケアマネジャーをしているしおこめパパです。3大幸福論編・ラッセル編⑱、テーマは「ラッセルに学ぶ不安との付き合い方5レッスン」です。今回は、眠れない夜に立ち上がる漠然とした不安の正体と、その距離の取り方について、ラッセルとともに考えていきます。

ラッセルは『幸福論』のなかで、「賢明な反省」と「無益な悩み」を分けて論じました。同じように見える「考えごと」も、輪郭がはっきりしていて、手の打ちようがあるものは「賢明な反省」。輪郭が曖昧で、考えてもどうにもならないのに頭から離れないものが「無益な悩み」。──不安は、たいてい後者の側にいる感情です。曖昧なまま放っておくほど、ふくらんでいく性質があります。

不安は、輪郭をぼかしておくとふくらむ。輪郭を描いてやると、ふしぎとおとなしくなる。

ケアマネとして「眠れません」「夜になると不安で胸がふさがります」とおっしゃるご家族や高齢の方によくお会いします。お話を聞いて、不安の中身を一つひとつ書き出していくと、「ああ、これは病院に相談してみよう」「これは話してみたら大したことなさそうだ」と、ふっと表情がやわらぐことがあります。不安は、ただ「ある」のではなく、輪郭を描いて初めて「扱えるもの」になっていく。──ラッセルの考えと、福祉現場の体感は、よく重なります。

ラッセルに学ぶ不安との付き合い方5レッスン

眠れない夜の処方箋として、ラッセルが教えてくれる5つの視点をお伝えします。

① 不安の「正体」を具体化する

ラッセルが最初に勧めるのは、「何が不安なのか」を具体化することです。漠然と「不安だ」「心配だ」と感じているとき、不安は実際の何倍にもふくらんで見えます。けれど、紙にひと言ずつ書き出してみると、「あれ、思っていたほど大きくないかも」と感じることが多い。

夜眠れないときは、枕元のメモに「いま気になっていること」を箇条書きしてみる。完璧な文章でなくて構いません。三つでも四つでも、輪郭を描くだけで、不安は少しおとなしくなります。輪郭を描くという行為そのものが、「自分はこの不安より大きい」というメッセージを、自分自身に送ってくれます。

② 「最悪のシナリオ」を一度書き出す

ラッセルは、不安を強くしている要因として「最悪を見ようとしないこと」も挙げました。漠然と「最悪のことが起きるかも」と思っていると、不安は無限に育ちます。逆に「もし最悪が起きたら、自分はどう対応するか」を一度具体的に想像してみると、不安はそこで頭打ちになることが多い。

だから、不安が強くなったら、ひと呼吸置いて「これが最悪起こるとしたら、何が起こるだろう」「そのとき、自分はどうするだろう」を、ノートに一行ずつ書き出してみる。たいていの「最悪」は、思っていたほど人生を破壊するものではないと気づきます。最悪と握手しておくと、夜の不安はかなり静かになります。

③ 解決可能と解決不可能を分ける

ラッセルは、心配ごとを「解決可能なもの」と「解決不可能なもの」に分けることを勧めました。解決可能なものには、明日の朝、具体的な一歩を踏み出す。解決不可能なものは、いったん「保留」の箱に入れて、深く悩み続けないようにする。

夜中に頭の中をぐるぐる回っている心配ごとがあったら、「これは、自分の行動で動かせるか?」と問いかけてみる。動かせるなら、明日のToDoに一行追加。動かせないなら、「これは保留」と自分に言い聞かせて、頭の中から一時的に取り出す。区別がつくだけで、夜の重さは半分くらいに減ります。

④ 心配の時間を「区切る」

ラッセルは、「同じ心配を一日中考え続ける」ことが、いちばん心を消耗させると指摘しました。だから心配ごとを「ちゃんと考える時間」を、あえて区切って設定するのが効果的だと言います。たとえば朝の15分だけ、その日の心配ごとを書き出して整理する。それ以外の時間は、「あとで考えるから今は置いておく」と自分に言い聞かせる。

「いつでも好きなときに考えていい」とすると、心配は一日中つきまといます。「この時間にだけ考える」と決めると、心配のほうも区切られた時間で律儀に来てくれることが多い。心配を消そうとせず、付き合う時間を選ぶ──これがラッセル流の上手なつきあい方です。

⑤ 体・呼吸・外気で、頭から逃がす

ラッセルは「不安と頭の中だけで戦っても、たいてい不安が勝つ」と書きました。だから、不安が強いときほど、体や呼吸、外の空気を借りることを勧めます。深く息を吸う、伸びをする、ベランダで一分だけ夜空を見る、温かい飲み物を一杯ゆっくり飲む。──こうした体への小さな働きかけが、頭のなかの不安を一段下げてくれます。

不安は、頭の中で考え続けるほど大きくなる性質があります。だから、考えるのをやめて、体に意識を移す。眠れない夜は、無理に眠ろうとせず、「呼吸を10回ゆっくり数える」だけでもいい。体が落ち着くと、不思議と頭も少しずつほどけていきます。

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Photo: chensiyuan / CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons

ラッセルの『幸福論』を、もっと深めたい方へ

ここまでの5つのレッスンを読んで「ラッセルの分析を、解説付きで読みたい」と感じた方には、『幸福論』(バートランド・ラッセル著・堀秀彦訳/角川ソフィア文庫)がおすすめです。各章の要約付きで、心配や不安に関するラッセルの章も読みやすく整理されています。

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不安は、輪郭を描けば扱えるものに変わる

不安についてラッセルが教えてくれることをまとめると、「不安は、ぼんやり眺めるほど大きくなり、輪郭を描くほどおとなしくなる」ということに尽きます。具体化し、最悪と握手し、解決可能と不可能を分け、考える時間を区切り、体と呼吸で頭から逃がす。──この5つを少しずつ習慣にすると、夜の不安は確実に「扱えるもの」へと姿を変えてきます。

不安に飲まれそうな夜があってもいい

もちろん、どんな対処法を知っていても、不安に飲まれそうになる夜はあります。眠れない、息が苦しい、誰かに話を聞いてほしい。──そんなときは、無理に一人で抱え込まず、家族や友人、医療や福祉の窓口を頼ってください。電話で誰かと話すだけでも、不安はずいぶん輪郭を保ちやすくなります。一人で立たない夜があっていい、というのも、ラッセルが教えてくれる大切な視点です。

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Photo: Michal Klajban / CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons

あわせて読みたい一冊

テレビ番組で人気の解説書から入りたい方には、『NHK「100分de名著」ブックス バートランド・ラッセル 幸福論 競争、疲れ、ねたみから解き放たれるために』(小川仁志/NHK出版)もおすすめです。哲学者・小川仁志さんがラッセルの幸福論を、現代の生きづらさに引き寄せて分かりやすく解説した一冊で、不安の扱い方も平易な言葉で再読できます。

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シリーズの今後について

次回⑲は「ラッセルに学ぶお金と幸福5レッスン」をお届けします。お金は幸福をもたらすのか、それともどこまで必要なのか。お金と上手につきあうための視点を、ラッセルとともに考えます。「3大幸福論編・ラッセル編」はシリーズ全30回まで継続予定です。

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