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体の調子が悪いと、心の余裕もすぐ削られていく。
かといって、健康に神経質になりすぎると、それはそれで疲れる。
体と、もう少し穏やかにつきあえる感覚がほしい。
こんにちは、社会福祉士・ケアマネジャーをしているしおこめパパです。3大幸福論編・ラッセル編㉗、テーマは「ラッセルに学ぶ健康と幸福5レッスン」です。今回は、心の幸福を支える土台──体について、ラッセル幸福論の視点で考えていきます。
ラッセルは『幸福論』のなかで、健康を独立した章として大きく扱ったわけではありません。けれど、彼は「疲労からの解放」「興奮と退屈の中庸」「努力と諦めのバランス」など、体と心の関わりを何度も語っています。彼の幸福論の根底には、「心は、体の状態にしっかり支えられて初めて整う」という静かな前提があります。
健康は、心の幸福が立つ土台。土台が揺れていると、いくら立派な家を建てても傾く。
ケアマネとしての日々のなかで、何度も思い知らされたのは「体の調子が、心の景色をまるごと塗り替える」という事実です。同じ出来事でも、体調が良い日は前向きに受け取れ、しんどい日はすべてが重く感じられる。体は、いちばん身近な「自分の味方」であり、同時に、ふだんいちばん粗末に扱われやすいパートナーでもあります。
ラッセルに学ぶ健康と幸福5レッスン
体を「味方」として育てていくために。ラッセル幸福論の視点を、健康というテーマで読み直した5つのレッスンをお伝えします。
① 体は「敵」でも「機械」でもなく、「味方」
ラッセルは、体を「思いどおりにならない機械」のように扱う発想を慎重に避けました。痛みやだるさは、体が壊れているサインではなく、「ここを大切にしてほしい」という体からのメッセージであることが多い。体を敵ともモノとも見なさず、「自分の味方」として遇する姿勢が、健康と幸福の出発点になります。
だからまず、体の声に「聞き耳を立てる」習慣を持ちましょう。今朝はどこが重いか、目はかすんでいないか、肩はこっていないか。──気づくだけでいい、対処は急がなくていい。体は、見てもらえているだけで、自然と回復力を発揮し始めるところがあります。
② 「ふつうの体調」を作る毎日の小さな習慣
ラッセルが幸福のために重視したのは、派手な健康法ではなく、「毎日のふつうの体調を整える小さな習慣」でした。十分な睡眠、ほどほどの食事、軽い運動、適度な気分転換。──こうした地味な日常こそが、長く心身を支えてくれます。
完璧な健康法に挑戦して三日坊主になるより、「これくらいなら続けられる」という小さな習慣を、いくつか持っておくほうが効きます。寝る時間を15分早める、エレベーターを階段にする日を週に一度作る、お味噌汁を一杯増やす。──小さな積み重ねが、確実に「ふつうの体調」を底上げしていきます。
③ 体の小さなサインを、無視しない
ラッセルは、「不調を我慢して頑張ること」が、結局はいちばん大きな不幸を呼ぶと書きました。体は、本格的な不調になる前に、必ず小さなサインを送ってくれています。眠りが浅い、食欲が落ちる、肩が異常にこる、笑えなくなる。──これらは、体からの「ちょっと休んで」というメッセージです。
忙しいときほど、こうしたサインを「気のせい」と流しがちですが、ラッセルが教えてくれるのは「小さなサインのうちに対処したほうが、結局いちばん早い」ということ。サインに気づいたら、まずひと晩多く眠ってみる、食事を少し軽くする、医療機関を受診する。──体を粗末にしないことは、心を粗末にしないことと、まっすぐつながっています。
④ 健康に「完璧」を求めない
ラッセルは、「完璧な健康」を求めることの危うさにも触れました。情報があふれる時代、私たちはついあらゆる数値を完璧に整えたくなりますが、それが新しい不安の源になることも少なくありません。「もう少し痩せたい」「もう少し血圧を下げたい」と言い続けると、健康そのものが目的化して、暮らしから余裕が消えていきます。
健康は、完璧を目指すものではなく、「今日も無理なく動ける」「明日もごはんがおいしい」くらいの目安で十分です。年齢を重ねるほど、すべてを若いころの数値に戻そうとせず、「いまの自分のふつう」を大切にする。健康への執着は、それ自体が小さな不幸の入り口になることを、忘れないでおきたいところです。
⑤ 病気・不調のときの心構えを持っておく
ラッセルは「努力と諦めのバランス」を、健康にも適用しました。風邪を引いたとき、慢性の不調を抱えたとき、思いがけない病気と診断されたとき。──そういう日に大切なのは、「変えられる部分には丁寧に対処し、変えられない部分は、いったん受け入れる」順番です。「なんで自分が」と責め続けるより、「いま、できる手当てだけ丁寧にやる」ほうが、結果として回復も穏やかになります。
元気なうちに、「不調のときの自分への声かけ」を一つ用意しておくのも、ラッセル流の知恵です。「今日は休もう」「焦らなくていい」「治っていくスピードはばらつくもの」。──病気は誰にでもいつか訪れますが、心構えだけは、健康なうちに準備できます。これは、未来の自分への贈り物になります。

ラッセルの『幸福論』を、もっと深めたい方へ
ここまでの5つのレッスンを読んで「ラッセルの分析を、別角度の翻訳で味わいたい」と感じた方には、『幸福論』(バートランド・ラッセル著・片桐ユズル訳/みすず書房)がおすすめです。疲労や生活習慣に関するラッセルの言葉も、独自のリズムで読み直せる一冊です。
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体は、いちばん身近な味方
健康と幸福についてラッセルが教えてくれることをまとめると、「体を味方として遇し、毎日の小さな習慣で支え、サインを無視せず、完璧を求めず、不調のときの心構えを持っておく」ということに尽きます。健康は、心の幸福が立つ土台です。そして土台は、派手に整えるよりも、地味に守ってあげるほうが長持ちします。
体がいうことを聞いてくれない日があってもいい
もちろん、どんなに気をつけていても、体が思うように動かない日はあります。眠れない夜、頭痛が抜けない朝、気力が湧かない週末。──そんな日は、「今日は体が休みたい日なんだ」と素直に受け取って、頑張ることをやめてみる。明日もまた、少しだけ整え直せる時間が来ます。

あわせて読みたい一冊
テレビ番組で人気の解説書から入りたい方には、『NHK「100分de名著」ブックス バートランド・ラッセル 幸福論 競争、疲れ、ねたみから解き放たれるために』(小川仁志/NHK出版)もおすすめです。哲学者・小川仁志さんがラッセルの幸福論を、現代の生きづらさに引き寄せて分かりやすく解説した一冊で、心と体のテーマにも応用しやすい入門書です。
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シリーズの今後について
次回㉘は「ラッセルに学ぶ自由と幸福5レッスン」をお届けします。「縛られない自由」だけでなく、「自由を健やかに使う」視点について、ラッセルとともに考えます。「3大幸福論編・ラッセル編」はシリーズ全30回まで継続予定です。
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