ラッセル㉒「孤独・つながり」5レッスン|独りと交わりの調和

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誰かといても、ふっと孤独を感じる夜がある。
かといって、ひとりが続くと、心細さに押しつぶされそうになる。
孤独とつながり、どちらかに振り切らずに過ごす方法はないだろうか。

こんにちは、社会福祉士・ケアマネジャーをしているしおこめパパです。3大幸福論編・ラッセル編㉒、テーマは「ラッセルに学ぶ孤独・つながり5レッスン」です。今回は、誰もが行き来する「ひとり」と「誰かと」のあいだについて、ラッセルとともに考えていきます。

ラッセルは『幸福論』のなかで、孤独もつながりも、どちらかに偏ることを警戒しました。「ずっとひとりでいられる人間は少ない。けれど、ずっと誰かといなければ落ち着かない状態も、同じくらい不幸を呼ぶ」。──そう彼は書きます。大切なのは、両方を持っていること。ひとりの時間が、誰かといる時間を新鮮にしてくれて、誰かといる時間が、ひとりの時間を心細さから守ってくれる。両方が循環しているとき、人は穏やかでいられる、と。

孤独もつながりも、どちらか一方では幸福にならない。両方を行き来できることが、心の健やかさを作る。

ケアマネとして、お一人暮らしの高齢の方や、家族と同居しながらも孤独を感じておられる方とお会いしてきました。「ひとりで寂しい」と訴える方には、つながりの細い糸を一本でも増やすお手伝いを。「家族はいるのに孤独」とおっしゃる方には、家族以外との接点や、自分だけの時間の作り方をご相談する。孤独もつながりも、量より「ちょうどよい配合」が大切だと、現場でしばしば学ばせていただいています。

ラッセルに学ぶ孤独・つながり5レッスン

孤独とつながりの間を、しなやかに行き来するために。ラッセルが教えてくれる5つの視点をお伝えします。

① 孤独を「悪」と決めつけない

ラッセルが最初に大切にしたのは、孤独を「敵」と決めつけないことです。「孤独=寂しい・かわいそう」とラベルを貼ってしまうと、ひとりの時間がすべて不幸の時間に変わってしまう。けれど実際には、ひとりでいるからこそできる読書、考えごと、創作、ぼんやりした休息など、心を整えてくれる活動はたくさんあります。

だからまず、ひとりでいる自分を「寂しいかわいそうな自分」と呼ぶのをやめてみる。「いま、ひとりの時間を過ごしている自分」と中立に呼び直すだけで、その時間の質はずいぶん変わります。孤独は、扱い方によって、毒にも栄養にもなる時間です。

② 「ひとりの時間」をスケジュールに入れる

ラッセルは、人と会う予定だけで埋まったスケジュールに警戒しました。常に誰かと一緒の生活は、外向きには華やかでも、内側ではじわじわ疲労が溜まっていきます。だから彼は、「ひとりの時間」を意図的にスケジュールに入れることを勧めます。

一日のうち15分でも30分でも、誰とも会わず、スマホからも少し離れた時間を確保してみる。お茶を一杯ゆっくり飲むだけでもいい、夕方の散歩でもいい。「予定を空けて、ひとりに戻る」時間を、自分との小さなアポイントとして大切にする。これが、つながりの時間を逆に新鮮にしてくれます。

③ 浅いつながりも、深いつながりも、両方持つ

ラッセルは、つながりを「深さ」だけで評価することにも慎重でした。「親友がいなければダメ」「分かり合える人がいなければ不幸」という発想は、つながりのハードルを上げすぎて、自分を孤独に追い込みやすいからです。深い関係も大事ですが、それと並んで、浅くて軽い関係もまた、暮らしを支える大事な層になります。

近所のあいさつ、行きつけのお店の店員さんとの一言、SNSでの軽いやりとり、年に一度の同窓会のメンバー。──こうした「浅いつながり」は、深い関係とは別の安心を運んでくれます。深さでも、量でもなく、層の数で見たとき、自分のつながりは思っているより豊かだと気づくことが多いものです。

④ 誰かを必要としていい、自分を認める

ラッセルは、「自立=誰にも頼らないこと」と勘違いすることへの注意も繰り返しました。本当の自立とは、必要なときに誰かを頼れる関係を持っていることであって、ひとりですべてを抱え込むことではありません。「人に頼ったら負け」「迷惑をかけるのが怖い」と思いすぎると、孤独はあっという間に深くなります。

だから、「誰かを必要としていい自分」を、ふだんから少しずつ認めてあげる。困ったときには「ちょっと相談していい?」と言えるように、調子のいいときから関係を温めておく。──こうした準備が、いざというときの孤独を、ぐっと浅くしてくれます。頼ることは、関係を大事にしている証拠でもあります。

⑤ つながりは「会う」だけではない

ラッセルは、つながりの形を「対面」だけに限定しませんでした。手紙、電話、本、音楽、自分が大事にしている過去の記憶──これらもまた、人と人をつなぐ立派なメディアです。物理的には離れていても、心の中で会いに行ける誰かがいるだけで、人はずいぶん孤独から守られます。

ですから、忙しくて誰にも会えない日でも、「会ったつもりで、あの人のことを思い出す」時間を持ってみる。亡くなった家族、遠くで暮らす友人、好きだった先生。──そういう「心の中の誰か」と話す時間も、ラッセル流のつながりの一つです。会えない日があっても、つながりは絶えていない。それを覚えておくと、夜の寂しさは少し和らぎます。

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Photo: Chensiyuan / CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons

ラッセルの『幸福論』を、もっと深めたい方へ

ここまでの5つのレッスンを読んで「ラッセルの分析を、原典で深く読みたい」と感じた方には、『幸福論』(バートランド・ラッセル著・安藤貞雄訳/岩波文庫)がおすすめです。日本のラッセル読書のスタンダードで、孤独と人とのつながりについての記述も、論理の筋を追いながらじっくり味わえます。

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孤独もつながりも、両方持っていい

孤独とつながりについてラッセルが教えてくれることをまとめると、「どちらかに振り切らず、両方の時間を行き来できることが、心の健やかさを作る」ということに尽きます。孤独を悪と決めつけず、ひとりの時間を予定に入れ、浅いつながりと深いつながりを両方持ち、誰かを必要としていい自分を認め、会えないときも心の中で会いに行く。──この5つの組み合わせが、孤独を健やかに過ごす土台になります。

寂しさに飲み込まれそうな日があってもいい

もちろん、どんな工夫をしても寂しさに飲み込まれそうな夜はあります。そういうときは、無理に「孤独を楽しもう」とせず、まず誰かに連絡してみる、福祉や医療の窓口に電話してみる、家族のグループLINEにひと言だけ送ってみる。──完璧な対応でなくていいのです。一晩だけでも、誰かとつながった感覚を取り戻せれば、明日また自分のペースを探していけます。

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Photo: chensiyuan / CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons

あわせて読みたい一冊

テレビ番組で人気の解説書から入りたい方には、『NHK「100分de名著」ブックス バートランド・ラッセル 幸福論 競争、疲れ、ねたみから解き放たれるために』(小川仁志/NHK出版)もおすすめです。哲学者・小川仁志さんがラッセルの幸福論を、現代の生きづらさに引き寄せて分かりやすく解説した一冊で、孤独や人間関係の章も平易な言葉で再読できます。

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シリーズの今後について

次回㉓は「ラッセルに学ぶ老いとラッセル5レッスン」をお届けします。長く生きたラッセル自身の晩年から、「老いていく自分」とのつきあい方について考えます。「3大幸福論編・ラッセル編」はシリーズ全30回まで継続予定です。

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